第14章 心の行方
壮「愛聖さん・・・」
まだなにか言おうとする逢坂さんに、私はただ笑顔だけを向けてみせる。
三「大丈夫だって!壮五の父ちゃんが何も出来ないくらいオレたちが人気者になればいいんだよ!伝説のアイドルのゼロを知ってるだろ?日本中が夢中になったスーパースターだ。そのゼロのコンサートを中止させるだなんて、誰にも出来なかった。それくらい有名になればいいんだよ。何もかも全部吹き飛ばすくらいのスターに、オレたちがなればいい」
一「そうですよ、逢坂さん。私の読みでは・・・レギュラー番組のオファーはこれからもたくさん来るでしょう。そうなれば、いくらFSCであろうとも全てに対応するのは難しいでしょう」
壮「三月さん・・・一織くん・・・」
いささかテンションが上がり気味に話す三月さんと、それとは真逆でクールに話し出す一織さんは、話すテンポは違えど、ベクトルの方向は同じ向きを指している。
こういう時のふたりって、さすが兄弟って感じで。
陸「心配しないでください!いつか・・・いつかきっと壮五さんのお父さんも、音楽のことも、壮五さんの気持ちも認めてくれますよ!そして・・・亡くなった叔父さんのことも・・・」
『私も、もっともっと頑張らないと・・・です』
ね?と七瀬さんに笑いかけて、それから逢坂さんにも同じ笑顔を向けた。
壮「僕は・・・ここにいてもいいのかな・・・」
大「聞かなくてもわかれっつーの」
壮「大和さん・・・」
コラ、と逢坂さんのおでこを突っついて二階堂さんも笑顔を向ける。
大「ソウ、今日はもうゆっくり休め。で、明日からはまた、みんなで一緒に頑張ろうぜ?」
壮「・・・ありがとう、みんな」
そう呟いた逢坂さんの声が、静かな部屋でみんなに届く。
二階堂さんが、みんなで一緒にって言った事が・・・逢坂さんの凍りかけた心を溶かしていくのが伝わってくる。
やっぱり・・・さすが、リーダーって事なんだろうなぁ。
みんなから慕われて、みんなの事をちゃんと分かってて。
大「あ、そうそう。みんなでってのは、そこの大泣き虫おチビちゃんもってことだからな?」
おチビ、ちゃん?!
それって私のこと?!とばかりに二階堂さんを見れば、口角を上げながら指先でメガネをかけ直していた。
あぁもう・・・前言撤回!!