第14章 心の行方
紡「FSCグループの会長さんが、壮五さんの・・・お父さん・・・」
大「マジか・・・いいトコの出だとは思ってたけど、まさかそこまでのところだとは・・・お兄さん予想外だったな」
逢坂さんからのカミングアウトにみんなは驚きを隠せずにいた。
三「スゲー金持ちじゃんか!でも、どうしてそれがオレたちの降板の理由なんだ?親だったら応援してくれるんじゃねぇのか?」
壮「ちょっと・・・事情があって音楽活動は反対されていて。だから僕も、会社を継ぐつもりではいたんだ。だけど、そう思いながらも心のどこかではどうしても音楽を捨て切れない日々を送っていて。そんな時に、社長に声を掛けられたんだ」
その時の話は、前に逢坂さんから聞いたことがある。
大学の帰りに立ち寄ったカフェで課題をこなしていた時に視線を感じて、顔をあげたらそこにニコニコとした社長が立ってたんだ、とか。
その時は、社長が自らスカウトに歩いてただなんて驚いたけど・・・よくよく考えてみれば、私も今のRe:valeの最初のライヴの帰りに、八乙女社長に声をかけられたんだっけ・・・とか、思ったんだよね。
壮「両親に相談はしたけど、当然・・・反対されて。成功する訳がない、成功したって続けさせるものかって、顔を合わせる度に言われたよ」
ふぅ・・・と息を吐く逢坂さんを見て、どれだけ反対されていたのかが想像出来てしまう。
私も、子供の頃から女優になりたい!だなんて夢を持っていて、そして八乙女プロダクションの社長に声を掛けられて。
初めは怪しいところだったらどうしようとか思ったけど、渡させた名刺を見ながら検索してみれば大きな事務所だったから、もしかして夢が叶う?!って思って母さんにウキウキしながら話を切り出した時、反対されたから。
母さんも、スカウトされたって話した時は驚いてたけど。
だからって八乙女社長の名前が刻まれている名刺を出したら、途端に大反対して。
どうしてそれ程までに反対するのか、何度聞いても・・・芸能界なんてムリだとか、夢は夢のままにしときなさいだとか言ってた。
でも・・・ひとつだけ、最後まで母さんに聞けなかった事があるんだよね。
夜中に母さんが、父さんの仏壇の前に座って八乙女社長の名刺を眺めながら、どことなく嬉しそうな・・・けど、なんとなく・・・悲しそうな顔をしていたのを見た事があって。