第14章 心の行方
三月さんが作ってくれた軽食を食べ終え、お礼にと洗い物係を名乗り出て作業をする。
目が覚めた時に二階堂さんの部屋だった事で、それまでの事を思い出しては、また恥ずかしい姿を晒しちゃったな・・・と苦笑を浮かべながらも、取り乱してしまった時に側にいてくれた二階堂さんには、ちゃんと感謝してる。
まさか、倒れてる逢坂さんを見て母さんの事を思い出しちゃうとか・・・
あれから随分と経つし、もう大丈夫だと思っていたから、自分でもびっくりしたけど。
ここ数ヶ月、忙しくて母さんの所に行ってなかったから、久しぶりに行こうかな?とも考えながらカップを洗っていく。
これから少しの間は、新しい仕事と言えば千たちとの仕事だけだし。
時間なら、きっとたくさんあるから。
三「おい愛聖、大丈夫か?」
ぼんやりと考え事をしていると、隣で洗い終わった食器を拭きあげている三月さんが顔を覗く。
『ちょっと考え事してて・・・でも大丈夫です、お皿割ったりはしませんって』
三「ちげーよオレが言ってんのはこっち。ほら、袖口に水がかかっちまうだろ?」
『あっ・・・危ない危ない、教えてくれてありがとうございます』
キュッと水を止めて、濡れた手を拭いてから袖口をと思えば、それは三月さんの行動によって止められてしまう。
三「あー、ほら。オレが捲ってやるから」
横からスルリと伸びてくる三月さんの手が、私の腕に触れて袖口をスルスルと捲っていく。
三「これでよし」
『お手数おかけしてすみませ、』
ただ単にお礼を言おうと顔を向ければ、そこには三月さんの顔があって至近距離で目が合ってしまう。
『え、と・・・ありがとうございました』
三「お、おぅ。濡れる前で良かったな」
私が微妙な空気を作ってしまったのか、三月さんもなんとなくおかしな様子でカラ笑いを見せた。
三「それにしても、壮五は大丈夫なのか?」
私たちが軽食を食べ終わった頃に帰ってきた紡さんに向けて、三月さんが声をかける。
紡「診て下さった先生は入院しなくても大丈夫そうだと、仰ってましたが・・・今は陸さんが壮五さんの側にいてくれてます。病院でも、陸さんがいろいろと教えてくれたので助かりました」
小「そうだったね。彼は子供の頃、病院生活が多かったって聞いてるから、きっとそれが今回いい方向で役立っていたんだろう」