第14章 心の行方
大「オレには出来ないよなぁ、そういうミツの行動。羨ましいっつうか?」
なに言ってんだか、と呆れながら零して、だけどオレは大和さんこそ羨ましいって思う事はたくさんあるってのに。
もし、あの時。
大和さんじゃなくてオレが愛聖の側にいたら。
愛聖は安心しきって、同じように眠ることが出来たんだろうか。
・・・なぁんてな。
そんなこと考えたって仕方ねぇのは分かってる。
大和さんは、大和さんで。
オレは・・・オレだから。
自分にないものを幾ら羨ましがっても簡単に手に入るわけじゃない。
あんな風にのらりくらりしてたって、大和さんはみんなの事をちゃんと見てくれてて、包容力だってあるんだから。
分かりにくいけどな。
だからホントは、もっともっと・・・オレたちにいろいろさらけ出してくれたらいいのにって思う。
大和さん・・・どことなくまだオレたちに言ってくれてないことがある様な気がして、大和さんをじっと見つめる。
包容力あって、誰からも好かれてて・・・何気に男のオレから見たって、カッコイイのに。
大「あー・・・ミツ?そんなに見つめたらイヤン・・・お兄さん照れちゃう」
「はぁっ?!」
わざとらしく、まるで女子みたいな照れを見せながらオレを見る大和さんに絶句する。
大「ちなみに知ってると思うけど、お兄さん・・・そっちの趣味はないからね?」
「オレだってねぇよっ!」
一「兄さん落ち着いて?!」
あぁもう、前言撤回!!
やっぱ大和さんは・・・今のままが大和さんだっ!
全くもって掴みどころがないのが大和さんだ。
『二階堂さんも三月さんも、仲良しですね』
笑ったせいで浮かぶ涙を指先で払いながら言う愛聖に、うっさいわ!と言って、気付く。
「愛聖、口端にパン屑ついてっぞ?・・・ほら、これ」
ちまっと摘んで取ってやれば、大和さんがまたニヤつき出す。
大「ミツ・・・オレという者がありながら浮気?」
「ちげーよ!ってかそういう趣味ないって言ってんだろ!」
愛聖に伸ばした手を引っ込め、カップを掴む。
これがオレたちの、ありのままの “ 今 ” なんだ。
そう思いながら、適温を通り越したカップの中身を一気に飲み干した。