第14章 心の行方
渡したエプロンをつけ手を洗いながら一織が並べられた材料にサラリと目を流す。
昔から最初を言えば最後まで理解するような弟だから、並べられた材料を見てオレがこれからなにを作ろうとしているのか察したんだろうと頷いた。
一織を手伝いに入れれば、1人で作り上げるよりも数段早く仕上がり愛聖と、それから腹減り軍団の前に皿と飲み物を並べて行く。
「食える時にちゃんと食え?女優業は体力勝負ってトコもあるだろ?それに、社長からこないだチラッと聞いたけど、あのRe:valeプロデュースで曲出すんだってな」
それはオレがたまたま事務所にいた時に事務の人が手が離せない状態でオレが電話を取ったら、あのRe:valeの千が直々に社長に電話して来てて。
何となく社長に聞いたら、いずれは分かる事だからって教えてくれた事。
大「へぇ・・・あのRe:valeプロデュースねぇ」
一「Re:valeが楽曲を提供したとなったら、それは話題性も大きくなるでしょう」
サンドイッチを口に入れながら、それぞれが思うことを言葉にする。
『それは・・・どうでしょうか。曲に関しては千が付けてくれましたけど、その・・・詞に関しては私が書いたものなので、本格的に音楽で活動してる方々からしたら、お遊びだと思われてしまうかも知れないです』
ナ「マリーが紡ぐWordに、Re:valeが曲を・・・それはワタシに向けた愛のメッセージですね?マリー、どんな愛の告白だとしても、ワタシは受け取りま、アウチ!・・・ミツキ、デコピン痛いデス!美しいワタシの顔、大変な事にナリマス!」
「だーまーれ!誰も愛聖がナギに告白のメッセージ書いてるなんて考えねぇよ!」
いつもの調子でツッコミを入れれば、それを正面から見ていた愛聖も吹き出しながら肩を震わせる。
やっと、笑ったな。
そう思いながらオレも笑えば、大和さんが妙にニヤついてオレを見ていた。
「なにニヤついてんだよ、オッサン」
片眉をピクリと動かしながら言えば、大和さんは更にニヤついて見せた。
大「いやぁ、さすがミツだねぇ」
「なんの事だよ」
大「美味い物とナイスなツッコミ、それであっという間にあんな顔をさせるとか・・・お兄さんには出来ないなぁ、うんうん」
大和さんがまた、楽しそうな顔をしながら愛聖を見る。