第14章 心の行方
❁❁❁ 三月side ❁❁❁
万理さんが壮五たちを迎えに出て行ってから、どれくらい経ったんだろう。
もうそろそろ戻ってくる頃なんじゃないか?なんて思いながらみんなが使ったカップを洗い始めた時、リビングのドアがカチャリと静かに開けられ顔を上げる。
「おぅ、起きたか」
『あ・・・はい、すみませんでした』
何食わぬ顔で声をかければ、何度かキョロキョロと目を泳がせながら愛聖が俯いた。
「とりあえずこっち座っとけ?なんか飲むか?って言うか、腹減ってないか?」
『えっと、少しだけ・・・でも、大丈夫です』
「遠慮すんなって。軽いもんくらいならチャチャッと作ってやるからそこ座って待っとけ?」
『・・・はい。すみません』
洗い物で濡れた手を拭いて、冷蔵庫から材料を幾つか出しては並べていく。
チラリと愛聖を見れば、泣いたせいでまだ腫れぼったい目を押さえては小さくため息をついている。
女優業なんだから、そんなに泣き腫らした顔じゃ明日から困るだろうに・・・と、何も言わずに一織たちの弁当用に使っている小さな保冷剤をハンドタオルに包んで愛聖の手元に置いてやる。
『三月、さん?』
一瞬だけ驚いた顔をしてオレを見る愛聖の頭を軽くぽんっと撫でて、またキッチンの中へと戻った。
環「みっきー、俺もなんか食いたい。ちょっとだけ腹減った・・・」
手のひらを腹に当てながら環がソファーから立ち上がり、愛聖の隣に座る。
「環・・・お前はさっき食っただろ?もう腹減らしてんのか?」
環「だって・・・腹減ったのは減ったし」
そう返す環に、しょうがねぇやつだなと笑えば・・・
一「兄さん、私もお願いします」
大「あ、ミツ。オレも」
ナ「ミツキ・・・ワタシもよろしくお願いします」
どういう訳か次々と腹へりをアピールして手を上げるメンバーがいて。
「オレは食堂のおばちゃんか!」
環だけならまだしも、あの健康管理にシビアな一織までがそうするってことは、きっと愛聖に1人で食べさせて気まずくならないようにだなと先読みする。
ま、確かに1人で食べるのって寂し感じするしな。
「全く仕方ない・・・一織、ちょっとこっち来て手伝え?」
一織に言って、掛けてあった壮五のエプロンを放って渡す。
一「兄さん、私はこれを?」