第14章 心の行方
「けど?」
陸「けど、大和さん達にもたくさん怒られて、環も反省してるんです・・・愛聖さんにも、大事な事だから壮五さんとちゃんと向き合って話さなきゃダメだとも言われてました。だから、もしまだ怒ってるなら・・・」
陸くんが言うように、環くんのやってしまった事は一般論的にも簡単に許されることではない。
だけど、それ以上に許されない事をしてしまったのは・・・僕だ。
「陸くん、環くんの事はもう怒ってないよ。これまでも時間にルーズな所は出来るだけその都度注意してきたつもりだけど、今回の事で環くんはちゃんと考えて行動出来るようになるだろうから。だから、もしも環くんが考え迷うことがあったら、その時は陸くんを初めとして、みんなが軌道修正をしてあげて欲しいんだ」
陸「オレたちが、ですか?壮五さんは??」
「僕は・・・どうかな・・・力になれる時はもちろんそうしてあげたいけど・・・」
そこまで言って、何となくこの先の言葉を飲み込んでしまう。
僕がいなくなっても、だなんて・・・陸くんひとりだけに話すのはフェアじゃないと思うから。
陸「あっ・・・点滴が終わった。壮五さん、ちょっとごめんね」
無言になった僕の様子を伺うように見た陸くんが、点滴が繋がった僕の腕へと手を伸ばし、点滴を止めた。
陸「これくらいの内に止めておかないと、看護師さんが来た時には血が逆流しちゃう時あるからさ」
そう言って笑う陸くんが椅子に腰掛けた時、ちょうどのタイミングでナースが部屋を訪れて、それを外して行く。
小「万理くんがすぐ来てくれるって。あ、点滴終わったみたいだね」
紡「お待たせしました!自販機がどこにあるかわからなくて迷ってしまって」
静かな部屋が少しだけ賑わいを見せるのを感じながら、僕は窓から見える月をそっと見上げていた。