第14章 心の行方
三「環、愛聖は・・・なんて言ってたんだ?」
環「えっと・・・倒れてるそーちゃんを見て・・・母さん・・・って・・・」
やっぱりそうか。
だから愛聖は、まるでしがみつく様に・・・俺に・・・
大「そこから後の話は、だいたい万理さんのモテモテ武勇伝やら八乙女プロダクションの社長は本当は優しいだとか?・・・あの社長が優しいだとか、信じ難い気もするけどな」
ハハッ・・・俺も最初はそう思ってたよ大和くん。
けど、愛聖が移籍会館の後に倒れたりだとか、ミューフェスの後に置いてきぼりになって送られた時だとかを見れば、本当はどこかに優しさを隠し持ってる人間だってのも、分かる気もするよ。
小鳥遊社長も、本当は人に恨まれるような人じゃないって言ってるんだから。
大「愛聖の事は、こっちから大丈夫か?って聞かなくてもいいと思う。敢えて何も言わずに、普段通りで。わざわざ心の傷に塩塗りこむことしたくないだろ?」
大和くんがそう言うと、三月くんはそれでも心配な事には変わらねぇけどな、と言って天井を仰いだ。
病院の方はどうなっているんだろうという話が上がった時、タイミングよくテーブルに出していたスマホが震えだす。
「ちょっとゴメン、出るね」
ひとこと断って画面をスライドさせれば、その相手は社長で、壮五くんの容態は落ち着いたから連れて帰れるとのことで迎えを・・・という連絡だった。
「壮五くん、入院しなくていいそうだよ。もう少ししたら帰れるみたいだから、これから俺が迎えに行ってくるよ」
通話を切った後みんなに告げて、ひとり席を立つ。
少しでも横になれる方がいいかな?とも思い、迎えには社用車を使うことを考え、それなら1度事務所に寄って鍵を取りに行かないと・・・なんて思いながら玄関までを歩き、大和くんの部屋の前で、ふと、足を止める。
まだ、寝てるんだろうか。
確かめようにも、そこが愛聖の自室ではない事でドアを開けることを躊躇する。
帰って来て、それから大和くんと一緒に様子を見ればいいか・・・
そう心で呟いて、歩き出した。