第14章 心の行方
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
一「大神さん、どうぞ?」
「ありがとう一織くん」
ほわりと香りが経つカップを受け取り、ただ、そこから立ちのぼる湯気に目を落とす。
壮五くんが、あんなになるまで気が付いてやれなかっただとか・・・
倒れてしまうまでに、もしかしたらSOSを発信していたかも知れないのに、それにすら気付かなかったのだろうか。
考えれば考えるほど、自分は視野が狭いんじゃないかと思ってしまって息苦しささえ感じて静かに息を吐いた。
大「な~にそんな顔しちゃってんの?イケメンが台無し」
「大和くん・・・あ、愛聖はどうしてる?」
三月くんと戻って来た大和くんが俺の肩を叩き、飄々とした姿勢でリビングを見回す。
「ほら、お前らもそんな顔しなさんなって。ソウはきっと大丈夫だから、みんなで普段通りの顔で待ってようぜ?」
ここにいるメンバーの顔を1人ずつ見ながら言う大和くんは、一織くんに手渡されたカップを手にしながら椅子へと腰を下ろす。
大「万理さん。愛聖なら今、オレの部屋で寝てる」
「は?寝てる?!」
大「そ。大泣きしながら色々と話をして・・・あ、それはこれからみんなにも話すけど。まぁ、あれだ。泣き疲れて寝ちまったって感じ?」
「泣き・・・あぁ、そうか・・・そうだよな・・・」
あの時、本当なら俺がついててあげられたら良かった。
けど、実際はそうも言ってられない事態だったし。
だからこそ、普段の生活の中でここ最近ずっと愛聖が一緒にいる大和くんならと頼んだのは、俺だ。
大「あー、そうそう。そう言えば万理さんて昔、パン屋でバイトしてたんだってな。んで、万理さんがいるシフトの日は行列が出来るほど繁盛してたんだって?」
「パン屋・・・?あぁ、それは俺がまだ音・・・小鳥遊社長に出会うずっと前の事だけど、どうしてそれを大和くんが?」
大「聞いたんだよ、さっき愛聖から。その後すぐ、会話が途切れ途切れになって気付いたら寝てしましたとさ。それはまぁ、置いといて・・・だな」
わざとらしくコホンと咳払いをしてみせる大和くんが、みんなにとりあえず座れよという仕草を見せる。
大「さっきみんなも見たと思うけど・・・あの愛聖の取り乱しっぷりは、過去の、あいつの母親の事が絡んでるみたいなんだ」