第14章 心の行方
オレの事はいいから、愛聖の事を話してくれよと話題を変えれば、別に新しく話せることは特にないけど・・・と愛聖が言った。
「あるだろ?オレたちに出会う前のこととか。子供の頃の事でもいいぞ?今日はお兄さんの大サービスで、どんな話でも聞いてやるから」
少しでも、今この状況とはかけ離れた話題を振れば気持ちが落ち着くだろうと無茶振りをしてやる。
初めのうちは恥ずかしがっていた愛聖も、こっちから話題を振ればそれにあった子供の頃の出来事を話す・・・ってのを繰り返して。
そして・・・
「へぇ・・・万理さんてパン屋でバイトしてた事もあったんだ?」
『はい・・・それ、で・・・万理・・・・・・混んで・・・・・・・・・』
話す会話が、途切れ途切れになって来て。
寄りかかっていた壁伝いにゆっくりと体が傾いて、隣に腰を下ろしているオレの肩口に、コツン、と小さな重みがかかったと思えば、やがて微かな寝息を立て始めた。
「話しながら寝ちまうとか・・・子供かよ」
ふつふつと湧き上がる笑いを堪えながらも、そういや今日、愛聖はあの千たちとのスケジュールがあったんだっけ?と思い出す。
あの千の事だから、またダル絡みとかされてたんだろうなと乾いた笑いさえ漏れる。
おまけにソウの事があって、あれだけ大泣きしてれば、そりゃ・・・泣き疲れて寝ちまうって事もありっちゃありか?なんて、預けられた温かさにそれ以上倒れないようにと腕を回して肩を抱く。
それにしても、随分と無防備だこと。
一応、お兄さんも・・・男、なんだけどなぁ。
なんて思っては見たものの、これだけ安心しきってスゥスゥと寝られると襲う気も起きないよな。
っていうか・・・そもそも襲わないけどな!
静かな部屋でじわじわと込み上げる笑いに耐えるように口元を押さえたところで、そっと遠慮がちにドアが叩かれた。
三「大和さん、ちょっといいか?」
「ミツか?ちょうどいい所に来たな・・・ちょいオレ、手が塞がってるから静かにドア開けて入って来てくれ」
三「はぁ?手が塞がってるって、なんだ?・・・まぁ、いいや、大和さん入るぞ」
そっとドアが開けられ、その隙間からミツが顔を覗かせ目が合うと、オレたちの状況を見たミツはギョッとした表情に変わった。
三「ちょっ、おい、大和さん?!」