第14章 心の行方
一「七瀬さん、救急隊員の方に発見時の状況を説明して下さい」
私の手から、隊員の人が逢坂さんをゆっくりと担架へ移動させ、容態を確認していく。
万「大和くん。搬送手続きとかあるから、ちょっと・・・愛聖を頼めるかな?」
大「あぁ、分かった・・・ほら愛聖、立てるか?」
万理にしがみついて泣き続ける私を二階堂さんが引き剥がすと同時に、万理が隊員さんの元へと消えて行く。
大「ここじゃ落ち着かないだろうから、移動しよう。えっと・・・あ、ミツ。オレちょっと愛聖をここから連れ出すわ」
三「連れ出すって、どこにだ?」
大「んー・・・ま、適当に?」
もぞっと腕を動かした二階堂さんが、三月さんに何かを告げる。
三「あぁ、そういう事か・・・分かった。何かあったら声掛けに行くよ」
大「んじゃ行くぞ、愛聖。ほらほら、しっかり歩きなさいなっと・・・」
未だ震えが止まらずにいる私を抱き寄せたまま、二階堂さんが歩き出す。
自力で歩くのが不自由な私は、二階堂さんに寄り添われながら・・・逢坂さんの部屋を後にした。
大「とりあえず、ここで」
どこかの部屋のドアを開ける音がして、二階堂さんが私をゆっくりと押し入れては、そのドアを閉める。
大「えっと?電気のスイッチは・・・あれ、どこだ?確か・・・この辺だったけど・・・」
灯りを付ける前にドアを閉めたせいで、二階堂さんは電気のスイッチを探す為に壁際へと寄って、手探りで壁を辿るも、フッと笑ってその壁に寄り掛かる。
大「愛聖、お前さん真っ暗な場所にオレといるの、怖いか?」
いつもとは違う感じの口調で二階堂さんに聞かれ、ただ、ふるふると首を横に振って返す。
大「なら、このままでもいっか。とりあえずなんもないけど、座るか」
隣同士並んで、壁に背中を預けながら言われるままストンと座ってみる。
大「ソウがまさかあんな事になってるとは思わなくて、ビックリだったよな。悪かったな、オレがリクと行けば良かったよな・・・」
小さなため息と共にそう言っては、二階堂さんは壁に頭をコツンとさせる。
『違う・・・んです。私・・・倒れてる逢坂さんを見たら、母さんの事を・・・思い出しちゃって・・・』
さっきの光景を思い返して、ようやく止まっていた涙が、また溢れ出した。