第14章 心の行方
雨に濡れてしまった始末をして、七瀬さんと一緒に逢坂さんの部屋の前に立つ。
陸「壮五さん、出て来てくれるといいけど・・・」
言いながら逢坂さんの部屋のドアを遠慮がちにノックして、七瀬さんが応答のない部屋に小さく息を吐き出した。
陸「やっぱオレでもダメなのかな?」
『そんなことないと思いますよ?あ、もしかしたら七瀬さんがそっとノックしたから気付いてないのかも知れません。逢坂さんて時々、ヘッドホンして音楽聞いてたりするから』
私がそう言うと七瀬さんは、じゃあもう少し強めにノックしたら気付いてくれるかな?なんて言いながら、先程とは違いドアが振動でガタリと震える強さでノックをする。
陸「壮五さん、オレです。陸です・・・あ、あれ?ドアが開いてる?」
強めのノックの振動でなのか、逢坂さんの部屋のドアが少し隙間を覗かせる。
『部屋の中は真っ暗ですけど、もしかして逢坂さん寝ちゃってるとか・・・?』
陸「最近凄く疲れてるみたいだったし、その可能性もあるとは思うけど・・・とりあえず、寝てたらそれはそれで仕方ないし、声だけかけてみよう?」
ノブを掴んだ七瀬さんが、逢坂さんに声をかけながらドアを開いて行く。
陸「電気ついてないし、ホントに寝ちゃっ・・・え・・・壮五さん?!」
中の様子を私より先に確認した七瀬さんが、驚きながらドアを全開に開く。
廊下から入り込む光の先には・・・部屋の中で倒れている逢坂さんが見えて・・・
その光景に・・・母さんが家で倒れていた時の事が重なって・・・膝が震え出す。
陸「壮五さん!!」
倒れている逢坂さんに駆け寄る七瀬さんと、その場で動けずに立ち竦む私の視線が交錯する。
『母、さん・・・』
陸「母さん・・・?」
逢坂さんを抱き起こそうとしている七瀬さんが、その手を止めて立ち上がろうとするのを見て、ハッと我に返り私もその側に駆け寄った。
『逢坂さん・・・逢坂さん!』
壮「・・・う、っ・・・」
苦しそうに表情を歪めた逢坂さんは、意識がハッキリしているとは到底見えず。
『七瀬さん、早く救急車を!それから万理か紡ちゃんにも連絡して!』
陸「わ、分かった!」
慌てながらもポケットからスマホを出した七瀬さんが、まず先に救急車を要請して、その後すぐに万理へと連絡を入れて状況を説明してくれる。
『逢坂さん・・・しっかりして!』