第14章 心の行方
なんかそういうの見てて、カッコイイ大人の男!って感じで、憧れるっていうかさ。
『お世話って程のことでもないけど・・・万理は私のこと、いつまでも子供扱いだし。二階堂さんっていったら、私の髪をゴシゴシやりながらトリマーにでもなった気分だとか言って笑ってるし』
むぅっと笑いながら愛聖さんは言うけど、オレは知ってる。
そういう時の万理さんって、なんか凄く優しい目をしてるってこと。
大和さんだって、同じ。
そんな風に言いながらおどけてからかいながらも、オレたちとは違う顔を見せてるっていうか。
オレは子供の時いつも、天にぃにそうやって面倒見てもらう事が多かったから、誰かの世話をしてあげるだとかなかったし。
『よし!こんなもんで大丈夫かな・・・あ、ほら。七瀬さんもちゃんと拭かないと』
「あ、オレは自分で出来るか・・・わぷッ!」
オレが持っていたタオルをサッと奪われ、愛聖さんがオレの頭を優しくわしゃわしゃと拭き上げる。
『七瀬さんこそ、風邪ひいたら歌なんて歌ってる場合じゃありませんよ・・・とか、一織さんに怒られちゃうよ?』
「一織はすぐオレに怒るからなぁ・・・わっ・・・」
言いながら顔にかかるタオルをどかせば、思ってたより近い距離にある愛聖さんの顔にドキドキする。
『七瀬さん?顔が赤いですけど・・・まさかもう熱でも出始めちゃってるんじゃ?!』
コツン、と当てられるおでこにびっくりして思わず体を引く。
「だ、大丈夫!まだ大丈夫だから!」
『あ・・・そっか、急にこんな事したら七瀬さんのおでこにファンデがついちゃうよね』
ごめんごめん、って言いながら無邪気な感じで笑ってる愛聖さんに、心の中で・・・そうじゃないんだけどな、と思いながら苦笑を浮かべる。
オレが言うのも、だけど。
きっと万理さんも、千さんも・・・TRIGGERの八乙女楽さんも。
こんな感じで愛聖さんの無邪気さに、心が緩む感じなんだろうな。
「もっと大人にならなきゃ・・・」
『え、なんですか?』
「あ、うん・・・なんでもない。そろそろ壮五さんの部屋に行ってみよう」
『ですね』
ポツンと呟いた言葉をまた飲み込むようにしてタオルを片付け、オレたちは壮五さんの部屋へと向かった。