第14章 心の行方
❁❁❁ 陸side ❁❁❁
愛聖さんと一緒に寮まで走って、ようやくその玄関を入る。
『結局、七瀬さんまで雨に濡れちゃったね』
髪から落ちる雨の雫を指先で逃しながら、愛聖さんが雨粒の揺れるオレの肩を払った。
「これくらい全然平気だよ。むしろオレより愛聖さんの方が凄くびしょ濡れじゃん!えっと・・・タオル!タオル持ってくるから待ってて!」
降り始めた雨は次第に強くなって、1枚のジャケットを2人で被りながらでも間に合わず・・・愛聖さんは途中でオレにジャケットを譲ってくれた。
もちろん、オレは断ったけど・・・でも、そんな事を言っている内に愛聖さんはジャケットをオレに被せて駆け出してしまった。
きっと愛聖さんは、オレの持病の事を考えてくれたんだと思うけど・・・愛聖さんは女の子だし、風邪でもひいたら大変なのに。
小走りで廊下を抜けて、バスルームの棚からタオルを取って玄関へと急ぐ。
その途中には壮五さんの部屋もあって、小さく体を折りたたんだ環の姿を思い浮かべる。
壮五さんが怒るなんて、相当な事だよな。
それに、壮五さんてお金持ちだったのか・・・オレ、なんかいいもの貰っちゃったし、今度ちゃんとお礼しなきゃ。
お金持ちかぁ・・・そう言えば壮五さん、前に家族を捨てたって言ってたけど。
それもきっと、なんか事情があったんだ。
今度・・・っていうか、後で聞いてみようかな?
「お待たせ愛聖さん。風邪ひいたりしたら大変だから早く早く」
1枚のタオルを手渡し、愛聖さんが顔や手にタオルを当てるのを見ながら、もう1枚で髪を拭いてあげる。
『七瀬さん、私よりもちゃんと自分を拭かないとダメですよ?』
「え?あー・・・そうなんだけどさ、ちょっとってみたかったんだよね。っていうか、憧れてたっていうか」
『憧れてた?』
「そう。ほら、いつもこういう感じの時ってさ、万理さんとか大和さんがやってるじゃん?それを見てて、オレも愛聖さんのお世話とかしてあげたいなぁ・・・なんて、アハハ・・・」
雨降りの中を傘もなく帰ってきた時の事務所で、万理さんが、風邪ひくだろ?なんて言いながらタオルで拭いてたり。
お風呂上がりでまだ濡髪のままでいる愛聖さんを、大和さんが世話してたり。