第14章 心の行方
背筋をスッと伸ばしてスラリと歩く逢坂さんを見ては、自然と自分も姿勢を確かめる・・・なんてこともよくある出来事で。
環「金かぁ・・・500円で許してくれっかなー・・・」
三「おめーはぶん殴られたいのか?」
問題は、ここから先・・・か。
どうしたらいいのかと考え出した時、それまで何かを考えていた一織さんが口を開いた。
一「ひとまず、逢坂さんとの話し合いの場を設けましょう」
『そう、ですね。なによりそれが最優先ですね』
一「四葉さんが行っても出て来てくれないのなら、他の人が呼びに行くしかありません。七瀬さん、呼んできて貰えますか?」
陸「分かった。呼びに行ってる間に環もちゃんと謝る準備しとけよ?」
『七瀬さん、私も一緒に行きます。1人より2人の方が策も増えますから。一織さんもそれでいいですか?』
ジャケットに袖を通しながら私は一織さんを振り返る。
一「そうですね・・・お願いします。もし逢坂さんが七瀬さんを振っても、女性である佐伯さんまで振り払う事はしないでしょうから」
陸「じゃ、行こう愛聖さん」
陸さんの声に頷いて、揃って事務所を出る。
寮までの道を並んで駆け進む途中、ポツリと頬に何かが触れて足を止めた。
『・・・雨?』
見上げた空は暗くどんよりとした雲で覆われていて、足元に目をやれば、影になったアスファルトが瞬く間に水気を帯びていく。
そう言えば、こんな天気の時は七瀬さんの持病が・・・
『七瀬さん!』
考えるより早く、さっき袖を通したばかりのジャケットを脱いで七瀬さんの隣に立ち頭から2人で被る。
陸「え、な、なに?!」
『雨足が強くなりつつあります。こんなジャケットしかありませんけど、びしょ濡れになるより幾らかマシです。すみませんけど、そっち側は七瀬さんが持って下さい・・・寮へ急ぎましょう』
陸「ありがとう、愛聖さん」
返事の代わりにニコリとひとつ微笑んで、ピシャリと音を立てながら、私たちはまた駆け出した。