第14章 心の行方
『これが、なんですか?』
大「言いにくいけど、ソウがお前にくれた奴より数段ヤバい」
『ヤバい?って・・・?』
大「だから、ヤバい。オレも特別詳しい訳じゃないけど、多分・・・倍以上するだろうな」
倍、以上・・・?
陸「え?」
三「・・・はっ?」
『えぇっ?!う、嘘ですよね二階堂さん!いつものお兄さんジョークとか言うやつですよね?!・・・ねっ?!』
二階堂さんは時々、私や四葉さんを驚かそうとしてびっくり発言することがあるからと続けても、二階堂さんは首を横に振った。
大「この部分、ちょっとよく見てみな?これってフェイクじゃなくて、本物だと思う。そしてその感じからして・・・愛聖の誕生石だな。ご丁寧にイニシャルまで刻まれてるし」
言われるがままに見れば、そこには極小さいながらもキラリと光る石はついている。
それは万年筆を受け取った時に知ってたけど・・・まさか本物の、だとは思ってなくて。
『ど、どど、どうしよう・・・そんなに高価なものだとは知らなくて、私、普通に使っちゃってた・・・』
一「それでいいのでは?贈り主もその為に渡したんでしょうから。それよりも今は、逢坂さんと四葉さんの事をどうするか、でしょう?」
『そ、そうですね・・・とりあえずこの万年筆のことは心の中にしまっておくことにします・・・』
さっきとは違い、大袈裟なくらいにドキドキしながらも、それを丁寧に仕舞う。
三「オレらからしたら、とんでもねぇ金額の物を使いこなす壮五って、実は金持ちだったのか?」
改めて七瀬さんの持つ鞄を見て、三月さんが考え込む。
一「でも以前、もやしは安くてお腹いっぱいになるからいいよねって、逢坂さんは言ってましたけど」
ナ「昔はセレブ・・・今は貧乏ってことでしょうか」
もし、ナギさんの言ったように・・・だったら、何となくスンナリ受け入れられるような気がした。
それは、私はここへ来て随分経つ気がするけど、初めて会った時から逢坂さんって物腰が柔らかくて、ひとつひとつの所作が丁寧というか、何気ない動作でも気品を感じるというか。
元々身についている物が、内面から知らずと滲み出ているような、そんな感じで。
・・・私なんて、八乙女社長に厳しく所作を叩き込まれていても、まぁ、どうなんだろって感じだから、側で見ていると逢坂さんのそれは手本になってて。