第14章 心の行方
環「女の子に、声掛けられた」
っ!・・・これは!
「「 有罪 」」
その場にいるメンバーが、声を合わせるように同じ言葉を漏らす。
ナ「仕事中に女性に気を取られるなんて・・・嘆かわしいです!タマキ・・・最低のアイドルですよ」
三「おいナギ・・・いまのセリフ録音しといてもいいか?」
「そうですね。今後、六弥さんが列からはぐれそうになったら大音量で流してあげましょう」
普段から六弥さんは、女性に対して柔和ではありますが・・・時々、そうとも言ってられない場合を考えれば妥当な・・・
そこまで考えて、ふと思うところに行き着き思考を巡らせてみる。
四葉さんも、学校では女子生徒によく声を掛けられている。
それは大概、授業の合間や昼休みが殆どですが・・・眠そうにしていても、そういった時は邪険にすることもなく会話を楽しんだりする姿をよく見ます。
女子生徒に頼まれ事をされれば、ほぼ断ることなく手を貸したり。
そう考えると、今回の件もそれに似たようなことでもあったんじゃないか?とも考えられなくもない。
ましてや街中で四葉さんのファンだとか言われたら尚更、笑顔で対応・・・という事も?
それならば、まだ・・・と見れば、小さく蹲ったままで項垂れていた四葉さんが口を開く。
環「俺・・・ファンのこと、嫌いだ」
陸「なに言ってるんだよ環?!」
環「応援してくれてありがたいなって思ってたけど・・・でも今は嫌いだ・・・大っ嫌いだ!」
三「環!さすがに今のは聞き逃せねぇぞ!お前、誰のおかげで歌ってられると思ってんだ!」
四葉さんが吐き出した言葉に、兄さんが激高する。
「待ってください!四葉さん・・・なにかあったんですか?どうしてそんな事を・・・」
そこまで言うのと同時に、私たちがいる部屋のドアが開けられる。
『戻りました・・・皆さんどうしたんですか?なんだか大きな声が聞こえてましたけど・・・』
「佐伯さん・・・あ、えっと・・・お帰りなさい」
『ただいまです。それでなにかあったんですか?』
部屋の中をぐるりと見て、みんなの様子がおかしい事に気がついている佐伯さんが、正面にいる私に視線を戻しながら、床に座り込み小さくなっている四葉さんを見て・・・ハッとした表情を見せる。
『もしかして・・・ケンカ、とか?』