第14章 心の行方
そっちかーい!!
なんて愕然としてる場合でもなく。
百「そうそう、オレもそれ気になってるんだよね」
千「仕事が決まった時に、あれだけ喜んで僕にまで連絡して来たって言うのに、降板しただなんて聞かされたら・・・僕はどう思う?」
いや、どう思うって・・・私だって自分から降りた訳じゃないから、それどころじゃなかったんだけど?!
『スポンサーの、意向・・・ですかね・・・』
それが本当の理由である事は間違いはない。
千「ふ~ん?スポンサーの意向、ねぇ・・・モモがスタッフから聞いた話だと・・・話が繋がらないんだけど」
百「だよね。オレがたまたまそのCMを担当するスタッフから聞いた話だと、イメキャラがマリーに決まった時はその人もワクワクしてたんだよ?あの佐伯 愛聖のメイクを担当するんだ!って他のスタッフも乗り気で、このCMはもしかして前にマリーが出てたTRIGGERとのCMよりも反響出るかも?!なんて言っててさ?」
『それは・・・知らなかった、けど。でも、スポンサーの意向で降りたというか・・・降ろされた、というか・・・』
まさかアイドリッシュセブンの降板に巻き込まれただなんて言えないし。
『とにかく!そういう事だから仕方ないじゃない?仕事ならまた頑張ればいいし、とか』
千「そんな作り笑顔で長年一緒にいる僕やモモが騙せると思ってるの?ちゃんと本当の事を話してくれないなら・・・」
『話さない、なら・・・?』
モゴモゴと口篭る私を見て、千が楽しそうに口端を上げて頬を撫でていた指先で私の顔を持ち上げる。
千「話さないなら、このまま・・・キスするよ?」
『えっ?!き、キス?!なんで?!』
百「ユキばっかりズルい!オレもオレも!!」
ちょ、ちょっと待って?!
なんでこんな展開になってるの?!
全身が硬直する私に千は目を細めながら、何度か私の背後にいる百ちゃんとアイコンタクトを取り始める。
千「僕が先で次がモモね。じゃあ愛聖、言わないなら、遠慮なく」
ゆっくり、心臓の音と重なるように千の顔が傾きながら近付いてくる。
う、嘘でしょ?!
ドクン、と大きく胸の音が跳ねて、千の吐息が鼻先を擽って・・・
『わ、分かった!話す!ちゃんと話すからストーップ!!』
あえなく私は、降参の白旗を上げた。