第14章 心の行方
百「そうそう!せっかくなんだからさ、帰る前に美味しい紅茶でも飲みながら話をしようよ!ね?ユキが入れるから」
千「僕かい!って、それは置いといて。愛聖にはちょっと、じっくりゆっくり・・・聞きたい事があったんだよね」
ついさっきまでケラケラと笑いながら百ちゃんと戯れていた千が、いまのこの一瞬でその気配を消す。
『私と話したいことって・・・えっと、なんだろ・・・』
なんとなくその千の迫力に負けて、ジリジリと少しづつ下がりながら、私なにか千にしたっけ?!と千の目を見つめながら思考を張り巡らせる。
今日も時間に遅れることなく千の家には来たし。
千が作った野菜だらけのご飯ももちろん残さず食べた。
と、なると?
なんだろ・・・特に思い当たる事が、ない、けど?
怪しい微笑みを浮かべながらジワジワと迫り来る千から距離を保とうと、私は私で1歩ずつ下がる。
千「僕に隠してること・・・ない?」
『かっ、隠してること、ですか?!』
ない!とは言い切れない。
もしかして、どこからか万理の事がバレた?!
でももし違ったら、私がここで実は・・・なんて言ったらそれこそ・・・マズイ気がする。
『な、ないよ!ないない!』
千「本当に?」
へぇ、そう?なんて言いながらも迫り来る千に大きく何度も頷きながら下がり続ければ、遂には背中に行き止まりを感じて・・・
百「こらユキ!そんな風にしたらダメだって。マリーが怖がっちゃうだろ?」
『百ちゃん?!』
背中に感じた行き止まりは壁なんかではなく、いつの間にかに背後に回っていた百ちゃんで。
さすが百ちゃん!天使だよ!!
助かった・・・と、思いきや。
百「聞きたいことがあるのは分かってるけどさ、そういう時はちゃんと聞いてあげなきゃじゃん?・・・ね?マリー?」
神様・・・天使だと思った相手は、もう1人の鬼でした!
千「そうね・・・じゃあ、モモはそのまま愛聖を捕まえといて」
百「オッケー!」
いや、オッケー!じゃなくて!!
さりげなく百ちゃんからも逃れようとしても、いつにも増してギュッと抱きしめる腕からは抜け出す事は出来ず。
目の前まで来た千が、私の顔に手を伸ばして指先でスルリと頬を撫でた。
千「愛聖。あの化粧品のイメージキャラクターを降りた本当の理由って、なに?」