第10章 不測の事態
❁❁❁ 龍之介side ❁❁❁
えっと、愛聖が待つ場所は···いた!
ウィンドウに写る自分を見ながら前髪を直すとか、やっぱり女の子って···かわいいよな。
それに、なんだかこういうのって待ち合わせしてるみたいだ。
信号が変わる間、そんな事を考えながら今もまだガラスと向かい合う愛聖の姿を見ていた。
「愛聖、お待たせ」
ぽんっと肩を叩けば、オレを見て愛聖が驚いた顔を見せる。
「そんなに驚かれるほどの強さだった?だったら、ゴメン」
『あ、違うの。楽が来るのかと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃった』
「そっか···あれ?もしかして楽の方が良かったとか?」
ハハッ···っと笑いながら言えば、その言葉に愛聖も笑った。
『龍で良かったって、ちゃんと思ってるよ?だって楽には既に、迷子になるとかアホか!って言われちゃったし?』
「そうだ、それ!なんでオレの家の前までタクシー使わなかったんだ?そうすれば迷子になんてならなかっただろ?」
迷子になった発端は、楽から聞いたそんな理由だった。
『ん~···だって、タクシー乗ってすぐに運転手さんに佐伯 愛聖さんですよね?うちの息子がファンなんですよ~アハハ~···って言われたから、もしかしたらあのマンションにはTRIGGERの十龍之介が住んでるとか知ってるかもって思ったら途中で降りちゃったの』
「オレは別に、なに言われても平気だけど?」
『そういう訳にはいかないでしょ?八乙女社長はスキャンダル的な物には厳しいし、TRIGGERのネームブランドが落ちちゃうような事を発信されたら私も困るし?』
まったく、ちゃんとしてるというか···逆に危なっかしいというか。
そういう所も、千さんや百さんがほっとけない所なんだろうな···なんて。
「あ、そうだ。早く戻ろう。じゃないと千さん達が着いちゃうかも知れないし」
大先輩がオレの家に来るって言うのに、肝心の家主のオレが不在だなんて失礼だから。
『え、千?なんで??』
「まぁ、いろいろ···かな?百さんからオレに電話が来てさ、天と代わってくれって言われて代わったら、その流れで来る事になったんだよ」
歩き始めながら話して愛聖を見れば、なんだか複雑な顔をしていた。