第10章 不測の事態
龍が迎えに来てくれた事で、無事?に龍の家に着いた。
歩きながら龍の出身地にいる弟さんの話を聞いたり、沖縄料理やお酒の話を聞きながら楽しい時間だった。
でも、玄関を入ればその楽しかった時間を忘れてしまいそうな見覚えのある靴たちに、1歩を躊躇う。
···千と、百ちゃんの靴だ。
楽「やっと戻って来たか。龍が言った後に入れ違いで千さん達が。俺がコーヒー入れて、天が話し相手になってる」
龍「ゴメン楽、それから天も」
龍がそう言いながら靴を脱いでいると、楽の後ろから千が顔を出してサラリと髪をなぞる。
千「気にしなくていいよ、事情は聞いたから。迷子の迷子の子猫ちゃんを迎えに行ってくれたんだろ?」
うぅ···早くも胃が痛くなりそうな空気。
千「愛聖。あれだけ気をつけてって言ったのに迷子とか、知らない人にお菓子でも配られたのか?」
『ち、違うもん···ちょっと来ないうちに街の風景が変わってただけだから』
龍「この辺も結構街並み変わったから仕方ないって。今度はもう迷わないよな?」
お日様のような笑顔を見せる龍に、私は頷きながら自分もそっと脱いだ靴を揃えた。
っていうか、私の靴が小人さんの靴のように見えるのは気のせい?と思えるようなサイズの靴の数に、なんだかおかしくて小さく笑った。
千「ここで立ち話もなんだから、早く入りなよ」
『千···ここは龍の家だけど?』
まるで自分の家のような物言いにツッコミを入れると、龍はそんな風にくつろいで貰えてるなら平気だからと嬉しそうにしていた。
龍は優しいから、きっと偏屈な千の事を許せてしまうんだね···
千「愛聖、考えてることダダ漏れしてるからね」
『はて···なんのことでしょう?』
ピクリと片眉を上げる千に乾いた笑いを見せながら、龍の後についてリビングへと入って行った。
千「まったく、おまえは···」
まだ小言が続きそうな千の袖を引いて歩けば、そこには百ちゃんと歓談する天がいて私を見るなり···冷ややかな顔を見せた。
こっちはこっちで···後で小言をプレゼントされそうで怖いよ···
龍「愛聖もコーヒーでいい?あの甘くてミルクいっぱいのやつ入れてくるから、座って待っててよ」
さ、どうぞ?と背中を押す龍に促され、いったいこの場合、どこに座ろうかと考えた。