第10章 不測の事態
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
「は?道に迷った??」
電話の向こうで困惑した愛聖の声が聞こえる。
ー タクシーで横付けする訳に行かないかな?って途中で降りたのは良かったんだけど、街の風景が変わってて迷子になっちゃった··· ー
「アホかお前は···ったく、仕方ない。いまどこにいるんだ?」
ー それが分かんないから迷子なんだけど···でも、いま私がいる場所はブライダルファッションって言うのかな?そんな感じのお店の前 ー
この辺にそんな店なんてあったか?
「龍、この辺にブライダルファッションの店なんかあったか?愛聖が迷子になったって」
キッチンカウンターの向こうでマグカップやらを並べだしている龍を振り返って聞けば、どうやらあるらしい。
「おい、そこでそのまま動くなよ。すぐ行く」
そう言って通話を切りジャケットへ手を伸ばすと、龍がその手を遮った。
龍「オレが行ってくるよ。その方が早いし、土地勘あるから。楽と天は、留守番しててよ」
天「そうだね。龍が迎えに行くほうが愛聖に辿り着くのは早そうだし?」
「···どういう意味だよ」
天「別に?龍、こっちは任されとくから、行って」
すぐ戻るよと言い残して、龍が部屋から出て行った。
「天、ちょっといいか?なんでRe:valeの2人もここへ来る事になったんだ?」
愛聖からの電話が来る少し前に百さんから龍に電話が入って、龍は天に取り次いだ。
その時の事を聞けば、天は同じ話を何度もするより1度で終わる方がいいからだと返ってきた。
天「それに、Re:valeはあの奏音ってタレントとの組み合わせで愛聖と別バージョンのCMを撮る。だったら、頭に入れて貰っておいた方がいい」
「天、お前は何を知ってるんだ?」
天「大した事じゃないよ。勝手におしゃべりな大人たちが話してるのを耳に入れてただけ」
「掴めないヤツだな、天は」
天「お褒めの言葉をありがとう、楽」
···なんつう、生意気な。
けど、これが世間では天使と騒がれるオレらのセンター···九条天、だしな。
ま、いいか。
天がどんな話を切り出すのかは、後で分かる事だ。
フンッ···と息を吐いてソファーに体を沈ませ、龍が愛聖を連れて戻るのを待った。