第10章 不測の事態
❁❁❁ 百side ❁❁❁
「ユキ、さっき天から聞いたんだけどさ。例のあの子、TRIGGERにも接点持とうとしたらしいよ?」
収録を終えて楽屋に戻って早々に、ユキに天から聞いた話をする。
千「···なんの為に?」
「そこはオレも詳しく聞けなかったんだけど、愛聖と一緒に仕事する事になったから、元同じ事務所だったTRIGGERにマリーの事を聞きたいって言って来たって」
一緒に仕事するなら、そんなのマリー本人にいろいろ聞けばいいじゃん?とか思ったけど。
そもそもRe:vale側とあっちとじゃ、撮影場所とか違うしマリーに頻繁に会えるワケでもないからと言って、天たちに聞くのも変だよな?
千「それでTRIGGERのメンバーはどう交わしたの?」
「それなんだけど、ちょっと···気になることがあって···」
千「気になること?···モモ、僕にも分かるように話して」
衣装を脱ぎかけたユキがその手を止めて、真剣な顔でオレを振り返る。
こんな時になんだけど、真剣な顔のユキも···ダーリンイケメン!!
···とか言ったら、多分ユキは怒るよな。
千「モモ?」
「あぁ、ゴメンゴメン。で、天から聞いた話ってのは、どうもあの奏音って子は新人なんかじゃないらしいんだよ」
千「新人じゃない?でもあの時···」
「そう。だからオレも新人って聞いたけど?って言ったら、天は···」
元々は違う事務所に所属して活動自体はしてた。
でも、そのうち事務所が潰れちゃって今の事務所に移った、とか言ってて。
それをそのままユキに話すと、ユキは少し考えてからオレを見た。
千「でも、それ自体は愛聖にはなにも関係ないだろ」
「それが違うみたいなんだよ。実は、最初の事務所の社長がさ、八乙女パパやマリーの知らないところでマリーの引き抜きをする手立てをしてたんだって」
千「引き抜き?」
「うん。でもそれが八乙女パパにバレて···潰されたって。だからあの子、その時と今と···名前が違うって天は言ってた」
そこまでを話すとユキの顔色が変わって、ユキは着替えもそのままに鞄からスマホを出して指先でアドレスを辿り出した。