第10章 不測の事態
寮に入ると想像通りみんなに驚かれ、騒ぎを聞きつけた二階堂さんにはイタズラのお返しをされ···うっかり自分からお願いした約束を忘れるとこだったよ···
モゾモゾと服を着替えて、手荷物を揃える。
財布に、手帳に、スマホ···と手を伸ばしたところで、着信を伝える振動が来て驚く。
ヤバ···もしかしたら万理が遅いって掛けてきたのかも?!
そう思って相手が誰なのか見れば。
あれ···天からだ。
私、天に何かやらかした?!
特別用事がない限り電話なんて掛けてこない相手に一瞬怯みながらも画面に触れて応答する。
『もしもし?』
天 ー 出るの遅い···って言いたいところだけど、急ぎの用事だから今日は許してあげる ー
『アハハ···ありがとうございます?』
若干の疑問形でお礼を言う私に、電話の向こうから盛大なため息が届いた。
天 ー 時間がない訳じゃないけど、回りくどいのはムダだこら単刀直入に言うよ。愛聖、奏音って人
知ってるよね? ー
『もちろん知ってるよ?次の仕事でRe:valeとのバージョンを撮影する新人の女優さんだけど、それがどうかしたの?』
天 ー 連絡先を交換したって本人から聞いたけど、本当? ー
『本当だよ?Re:valeの楽屋にいたら彼女が訪ねてきて、少しの時間だけどいろいろ話をして、仕事のことで悩んでるみたいだったから、何かあったらって連絡先を交換したけど』
嘘偽りのない事実を話せば、さっきよりも遥かに大きなため息が聞こえてくる。
天 ー なんで愛聖はそう簡単に連絡先を交換なんてするかな···バカでしょ ー
『別に変な人じゃなかったと思うし、相手は女の子だし大丈夫でしょ?』
天 ー もし、大丈夫じゃなかったら? ー
『どういうこと?』
天 ー 詳しい事は直接話した方がいいみたいだね。愛聖、今日これから時間ある? ー
天の言葉の意味が分からないまま、用事をひとつ終わらせれば、その後は時間が作れる事を伝えてみる。
天 ー 分かった。じゃあ、ボク達は···そうだね、龍の家で待ってるから連絡して ー
『龍の?別にいいけど···じゃあ、その時に』
そう言って通話を終わらせ、私が知らない所でいったい何が起きてるのか···不安になった。
私はただ···彼女と連絡先を交換しただけなのに···