第10章 不測の事態
❁❁❁ 壮五side ❁❁❁
『今度の仕事で着る衣装なんです』
大和さんにセーラー服の事を聞かれた愛聖さんが、似合います?なんて笑いながらスカートを少しつまんで見せる。
大和さんはそれを見てケラケラと笑ってたけど、僕は···そんな愛聖さんを、可愛らしい人だなと思った。
それと同時に、やっぱり凄いんだ···とも。
愛聖さんの過去の作品は、当時の実年齢よりも上の役柄が多かったみたいだけど、今回はセーラー服を着てるあたり実年齢よりも下になる。
なのに、それぞれの役柄に年齢の違和感を感じさせないところが、やっぱり努力して培った賜物なんだなと。
それに、万理さんにはとことん甘えを見せるところも可愛らしいと思える要素のひとつで。
環「そーちゃん?難しい顔してっけど、なんか怒ってる?」
「え?僕?」
突然ひらひらと僕の顔の前で手を振る環くんに驚き、1歩下がる。
「別に怒ってなんかないよ?」
環「でも、そーちゃん難しい顔して、赤くなったり、普通になったりしてた」
赤···く?
「それは愛聖さんが、かわいいなって思ってて···あ···」
つい口に出してしまった言葉を押さえるように口元を隠す。
大「へぇ···?ソウは愛聖がカワイイと思ってるのか?」
「別にそういう訳じゃ···いや、そうはそうだけど、そうじゃなくて」
いつもの感じでニヒルに笑う大和さんに追求されて、可も不可もない返答をしてしまう。
三「どっちだよ」
環「そーちゃんがマリーがカワイイって思うんなら、いいんじゃね?な、マリー?」
『はい。そう言われると私も嬉しいですよ?だって二階堂さんなんて、いーっつもおどけた扱いばっかりだから』
べーっと大和さんに笑いながら言う愛聖さんが、僕を見てありがとうと微笑む。
うん···やっぱりそういうところも、可愛らしいなと思うよ。
『そうだ!私これから万理と約束してるんだった···着替えて来なきゃ』
ヒラリとスカートを翻して自室へと向かう愛聖さんを見て、ここへ来た頃の彼女を思い出す。
「随分と柔らかい感じになったな···」
ぽつりと漏らして、それだけ僕たちに心を許してくれてるんだなと小さく笑った。