第10章 不測の事態
❁❁❁ 大和side ❁❁❁
ふと気がつくと、玄関先でわーわーと騒ぐ声が聞こえて部屋から出てみる。
そこにはタマもミツもソウもいて。
あとは···ん?
···セーラー服って、誰だよ?!
まさかMEZZO"のファンがここまで押しかけてきたのか?
もしそうなら、なるべく温和に帰って貰わないと···こんなのが社長にバレたら、いや、それ以前にマスコミにでも撮られたりしたら···大変だ。
「いくらMEZZO"のファンだからといって、こんな所まで入って来ちゃダメだろ?ソウのファンか?それともタマの方か?」
壮「あ、大和さん···すみません、騒がしくしてしまって」
オレの言葉に反応して振り返るソウが、なぜか珍しく高揚を見せながら謝ってくる。
環「つうか、俺らのファンだったのか?」
俯いた女子高生にタマが言うも、小さく肩を震わせて俯いたまま動かずにいる。
なんだよ、どうなってんだ?
『あの、私···実は···二階堂大和さんに会いたくて会いたくて』
「え、オレに?」
『はい···あの!し、失礼します!』
「あ、おいっ!ちょっと?!」
一瞬の隙をついて靴を脱いだ女子高生が突然オレに抱き着いてくる。
いったいどうなってんだ?
でも、アレだ。
自分のファンだと言われて、悪い気はしないって言うか?
呆気に取られながらも抱きつかれたままでいると、ミツがガマンできないといった感じで吹き出した。
「ミツ、なんでそんなに笑ってんだよ」
三「お···おっさん···アホすぎるだろって」
「は?」
ソウやタマを見てみても、ミツほど笑ってはいないが···オレと目が合うと困ったように視線を逸らす。
「そんな風に笑ったら、この子に悪いだろ···きっと凄い勇気だと思うぞ、お兄さんは」
キュッと抱きついた体は、小刻みに震えていて。
こんな所に入り込むことがどれだけタブーなのか分かってて、それでも···って気持ちで···ん?
待てよ···?
玄関に散らばった脱ぎ捨てられた靴には見覚えが···
それにこの香りも、日々オレの周りで香ってる物とよく似てる気もする。
「ちょい、いいか?ちょっと顔、見せてくれない?」
そっと顎に手を添えて言ってみれば、フルフルと首を振って頑なに俯きを変えず。
その頑なさが、恥ずかしがってるを通り越して怪しさを増す。