第6章 BLESSED RAIN
『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。ステージで音源と主要ライトが止まってる。それはそっちからも見えてると思うけど···私に何か出来ることはない?!スタッフパスも付けてるし、何かあれば動けるから』
言いながらも少しずつ階段を降りて、真っ暗になってるステージの近くまでは来ることが出来た。
小 ー 愛聖さん、聞こえる?僕だけど··· ー
『社長···はい、聞こえてます!大丈夫です。いまステージの側まで降りてきました』
小 ー ステージの?そうか、じゃあひとつ頼まれてくれるかな?いま万理くんと紡くんには機材の故障箇所や部品交換の予備があるかどうかとか、その辺の事は動いて貰ってるから。愛聖さんはステージの側にいるなら、彼らの様子を見て貰える?大丈夫だとは思うけど、ケガはないかとか、あとはステージの状態だとか、真っ暗だから見えないかも知れないけど無理のない範囲で ー
『分かりました。確認次第、報告します』
···とは言ったものの。
ステージの上には人の気配はするけど、ほんとに真っ暗で見えないんだよね。
とりあえず、声は掛けてみようか。
誰かいますか?!ってのは、いるのは分かってるんだから変だよね?
と、なると。
こういう場合は、リーダーである二階堂さんの名前を呼びかけるべき?!
それとも、ポジション的に端にいるメンバーとか···
···誰が端にいるか、わかんないや。
振り付けで動いてる時に真っ暗になったんだから。
じゃあ、やっぱり···
『二階堂さん!佐伯です、どこにいますか?!私はステージから見て左端にいます』
騒ぎにならない程度の声で呼びかければ、暗闇と化したステージで人が動くのが分かった。
足音が少しずつ近付いて来て、私の目の前に二階堂さんがスっと膝をついた。
大「愛聖、おまえさん客席にいたんじゃなかったのか?」
『いました···けど、緊急事態なので急遽スタッフパスとインカムを鞄から出したんです。いざと言う時は、客席からの方が近い事もあるかと思って』
ほら、とパスとインカムを見せてから、ね?と笑う。
『それで、現状ではメンバーにケガとか気分が優れない人はいますか?社長や万理とはインカム繋がるみたいなので報告しますから』
大「いや、オレ達は大丈夫。客席は?」