第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
「凄い盛り上がりだねぇ、これなら中継の時もいい感じに行けそうだよ」
紡「はい!ありがとうございます!」
番組関係者と紡さんの会話が聞こえて来て、俺もステージに視線を移す。
輝かしいライトに照らされるアイドリッシュセブンのみんなと、客席ではファンのみんながメンバーそれぞれのイメージカラーのライトを振って盛り上がっている。
ただひとつ心配なのは···
小「とうとう、降り出してしまったね」
「えぇ、予報では所によりって言ってましたけど···」
そう、この雨だ。
陸くんの事ももちろん心配ではあるけど、それ以外には客席にいる愛聖だって本来は事務所所属のタレントなんだから、もしもがあったら大変だ。
けどまぁ、野外スタッフに配ったレインコートは愛聖にも渡されてたし、今頃は客席のファンの子たちと同じように着てるはず···って···
「えっ?!···ウソだろ?」
小「万理くん、どうしたの?」
「あ、いえ。雨が降って来てるし、客席にいる愛聖はスタッフ用のレインコートを着てるだろうかって思ってたんですけど···それが、ここに···」
長机の端に置かれたレインコートの外袋には、マジックで大きく、佐伯 愛聖 さん···と書かれているから間違いはない。
小「愛聖さんってば···持ち忘れてしまったのかな?ここで身支度してる時にバタバタと持ち物を入れ直したりしてたようだから」
それにしても、雨が降るかもって時に···あ、あぁ~···愛聖は、そういう所···ちょっと抜けてるんだったっけ。
アイツが子供の頃、下校途中で雨に振られて店先で雨宿りしてた事もあったよなぁ。
ちょうど俺がバイトの帰りで見かけて、一緒に傘に入って家まで帰ったんだけど。
その辺、あの頃のまんまってやつか。
小さなため息を吐くと、空が唸り声を響かせる。
雷まで鳴り出した。
次第に強まる雨足を見つめながら、せめて客席の場所が分かれば···っと思っても、もう遅い、か。
諦めのため息をついた時、さっきよりも眩しく空が光り、同時にステージが一瞬にして暗転と変わった。
まさか、近くに雷か落ちたのか?!
紡「そんな···こんな時に···」
ざわめくスタッフ達の声に、紡さんの呟きが混ざっていた。