第6章 BLESSED RAIN
「早く始まらないかぁ、待ち遠しいよ!」
「だよね!だってすっごく楽しみにしてたし!」
周りから聞こえてくるファンの子達の声に私もドキドキ、ワクワクする気持ちが大きくなる。
そっと腕時計を見れば、あと数分って所まで針が来てた。
はぁ···なんか私まで緊張してきた。
みんなとは寮や事務所で毎日顔を合わせているのに、さっきだって会場入りやリハの時も一緒にいたのに。
でも、そんなのとは全然違って。
今は···ファンの子達と同じ空気を吸って、同じ風を感じて、ここにいるから。
初ライヴの時にはお客さんなんて全然いなくて。
それでも一生懸命にやり遂げたアイドリッシュセブンのみんなの映像が頭に浮かぶ。
あの時とは違って、溢れるほどのファンでいっぱいの会場。
それに、今日のライヴは途中でテレビ中継も入るって社長が言ってた。
こんなにたくさんのファンに囲まれたライヴが中継されたら、きっとみんな···あっという間に有名になって行くんだろうなぁ。
「あっ!誰か出てきたよ!!」
「キャーッ!陸くーん!!」
いくつかの人影がステージに上がるのが見えて、うっすらとしていた照明が一気にライトアップされると、そこにはみんなの姿がハッキリと見えた。
陸「えっと···今日は来てくれてありがとう!」
七瀬さんの元気な挨拶から始まって、ひとりずつメンバーがみんなに向けて挨拶をして行く。
その度に会場にいる女の子たちが黄色い声援を送り、特にナギさんの時にはキスを投げる仕草に女の子たちが投げられたキスをキャッチするような動きをして盛り上がったりしていた。
天気予報では、今夜は所により雨になりそうだと言っていたけど、今のところは空もそこまで曇天ではなくて···大丈夫そうかな?と胸をなで下ろした。
雨が降ったりしたら、七瀬さんが···とか一織さんに聞かさせれていたから心配していたけれど···
盛り上がりを見せる中で、ひとり空を見上げてみる。
少し空気が湿り気を帯びている気もするけど、どうか···このまま最後まで、雨が降り出しませんように。
空を見つめながら、そう願った。