第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 三月side ❁❁❁
大和さんが中心になって、掛け声かけて気合いを入れる。
そこにはマネージャーもいて。
側には社長や万理さんも見守っていて。
愛聖は···いなかったけど、でも、会場にお客さんとして待ってるって社長から聞いた。
それって、それって凄いことじゃんか!
本当ならスタッフとしても会場で手伝ってたんだから、そのまま特に苦労もなくステージを見ることだって出来るのに。
なのに、コネもなにも使わずに自力でチケット取ったとか!
発売日のあの瞬間には、マネージャーとみんなでパソコンの画面とにらめっこして一瞬で売り切れになったのを見た。
信じられない気持ちでいた所に万理さんが来て、チケット会社から完売の知らせも来たって聞いて、みんなで一緒に喜びを噛みしめた。
マネージャーなんて嬉し泣きするくらいだったんだぜ?
その一瞬で売り切れてしまったチケットの1枚を、愛聖が自分でお金を払って買ってくれてたとか、そんなの大和さんじゃなくったって嬉しいじゃねぇか!
アイツがCM撮影の途中で行き詰まった時には、なぜかオレが浮かんで元気を分けて貰おうかと思ってって電話をくれた。
いろんな話をして、話を聞いて、それで最後には笑って、頑張れそうだ、ありがとうって言ってくれた。
今度は、オレも頑張る番だ。
みんなに比べたら歌もダンスもまだまだで。
体格差のせいもあって何度練習しても上手くいかなかった事も、実は緊張でガッチガチだった事も。
社長や万理さんから聞いたさっきの話で全部吹き飛んだ。
直接的に愛聖から言葉を貰った訳じゃないけど、それでも、失敗したらどうしようとか、歌詞間違えたらどうしようとか、重くなってた気持ちがフワッと軽くなった。
愛聖、ありがとな。
ステージに上がる前にふと立ち止まり、まだなにも見えない観覧席を見る。
一「兄さん?急に立ち止まって、どうしたんですか?」
後ろにいた一織も足を止め、オレを覗く。
「あの客席の中のどこかに、愛聖がいるんだなって思ってさ」
一「そうですね。佐伯さんの気持ちに恥じないよう、最高のステージにしましょう」
「だな!」
グッと手を握って見せて、軽く一織の胸に手を当てる。
この階段を上がり切ったら、いよいよ···始まるんだ。