第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 陸side ❁❁❁
いよいよ、だ。
前の時にはお客さんもガラガラだったけど。
今日のライヴはチケットだって売り切れになってたし···気合い、入れないと。
もう少ししたら開場になって、お客さんが入り始めるって万理さんが言ってた。
いま、オレが出来ることは。
···一織に怒られずにリハーサルを終わらせること、かな。
うん···多分それいちばん今大事かも。
「すぐ怒るんだもんなぁ、一織は」
はぁ···と息を吐き出しながら、つい言葉に出してしまう。
一「それは七瀬さんがドジばっかり踏むからですよ」
「げっ!出たっ!!」
一「げっ、ってなんですか!失礼ですよ七瀬さん!」
「一織の方こそ気配を消して後ろに立ってるとかどうなんだよ」
一「気配?私は普通にさっきからいましたけど?気配を感じないくらい七瀬さんが鈍感なんじゃないですか?」
うぅ、一織に言い返せない自分が悲しい···
環「りっくん、あんま気にすんな?俺もいおりんに学校でよく怒られるから、仲間だし」
一「四葉さんの場合は七瀬さんとは違います。あなたは普段から授業中寝ていたり、当番もちゃんとやらないからですよ」
環···お前どれだけ一織に怒られてんだよ。
壮「まぁまぁ、ふたりとも。気分転換にお茶でもどう?いまちょうど美味しいハーブティーを入れたからみんなに声を掛けに来たんだ」
「壮五さんの入れてくれるハーブティー、凄く美味しいから好きです!」
一「···兄さんの入れてくれる物だって、美味しいですよ」
「出た···一織の三月びいき。一織ってホント、ブラコンだよな」
一「ブラコ···ち、違います!実の兄弟なんですから普通です」
必死に否定するところが怪しいって言うか。
一「なんですか七瀬さん。言いたいことがあるならハッキリ言ってください」
言ったらまた怒るじゃんか···
三「おーい!お前ら早く来ないと打ち合わせ出来ないだろ!」
ナイスなタイミングで三月がオレたちを呼びに来て、最終打ち合わせが始まるから早く集まれよと背中を叩く。
打ち合わせが終わったら、最後の音合わせや立ち位置の確認して···それから···
その先の事を思い浮かべれば浮かべるほど、緊張感が高まって行く。
今日がオレたちの···新しい1歩になるんだと思うと、自然と手を握りしめた。