第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 千side ❁❁❁
『千···』
急に手を止めさせた代償として、愛聖が大きく瞳を揺らす。
メロディーが聞こえなくても、その愛聖の爪弾くコード進行で···あの、曲だと分かってしまう。
「それだけは、ダメだ···お願いだから」
そう言って、愛聖の手からそっとギターを受け取りスタンドに立てる。
『私、自分にしか聞こえてないと思ってて···』
「聞こえてはないよ。だけどその曲は、弾き方で分かる···僕を誰だと思ってる?なんて···っと?」
ふわり、甘い香りに包まれる。
それは僕のでもなく。
もちろん、モモでもなく。
僕のよく知ってる、愛聖の香り。
『千、ごめんね』
胸元で呟く声に、返事の代わりに柔らかに抱き締め返して髪を撫でる。
「今夜、このまま···泊まっちゃう?」
答えが分かっていても、つい、いつもの感じで問いかける。
『それはムリ』
「即答とか、お仕置きが必要だな」
チュッと軽く音を立てながら頬にキスをすれば、チクリとした視線を感じてモモを振り返る。
「いること忘れてた」
百「ユキー!マリーのこと大好きなのは知ってるけど!オレだって構って欲しい!放置プレイ厳禁!」
「男にキスは···ちょっと···」
拗ねるモモに向けて眉を寄せれば、モモは両手をバタつかせながらキスは求めてないから!と笑い出した。
百「あ。でもユキからのキスなら大歓迎!ねっ、ほら!オレにもキスちょーだい!」
「えぇ···」
グイグイとモモらしく詰め寄ってくる間合いに引きながら愛聖を見れば、その細い方が揺れている。
「愛聖、笑い事じゃないから。僕の一大事···助けて」
頭を抱くように耳元で囁くと、小さく揺れていた肩がさらに揺れる。
『いいんじゃない?モモちゃんだし、減るもんでもないし?大丈夫、今から見ちゃう出来事···黙っててあげるから』
「あのねぇ···」
楽しそうにクスクスと笑う愛聖のおでこを指で押して、まったく···とため息を吐く。
「モモ、ちょっと」
モモの首筋に手を伸ばし引き寄せ “ 仕方なく ” 頬にキスをする。
百「うぉっ?!ヤバい、オレ···ユキになら抱かれてもいい!」
「それはヤメテ」