第6章 BLESSED RAIN
『ねぇ千、お願いがあるの!』
千「お願い?」
千の仕事部屋には、いろんな楽器が置いてある。
仕事する時はそれを使いながら、パソコンに打ち込んだりして曲を作ってるのも知ってる。
『千の部屋にある楽器、今だけちょっと触らせて欲しいの。ダメ?』
千「僕が愛聖のお願いを断ったことないだろ?」
えっと···あるけどね、結構。
でも今は、そこの問題は大したことじゃない。
千「いいよ、いまから行く?」
軽く髪を束ねた千が微笑みながら私をジッと見つめる。
『ありがとう千!···やっぱり大好き!』
ぴょんと小さく跳ねて抱きつけば、千はそんな私をギュッと抱きしめ返した。
千「やっぱりってのが気になるけど?ま、いいか···フフッ」
詞が上手くいかない時、万理がよく曲の流れを先に作ってたりするのを見て来た。
紙にコード譜やTAB譜を書いては、何度も何度も弾いて曲のイメージを形作ってた。
私も、それを試してみたい。
···と、その前に。
『千?そろそろ解放してくれないと身動き取れないんだけど?それに、そろそろ百ちゃんがシャワーから出て来、』
百「あっちぃ!熱めのシャワーにしたのはいいけど、熱すぎ···って···あぁっ!!ふたりでイチャイチャしてズルい!!」
『ほらね?』
千の胸を押し返して笑えば、千も楽しそうにクスクスと笑いながら百ちゃんを見た。
千「モモ、いまから愛聖を僕の仕事部屋に連れてくけど、モモはどうする?···帰る?それとも一緒に部屋行く?」
百「なんで最初の選択肢が帰るなんだってば!オレも仲間に入れてよ!···独り占め禁止!マリー、オレもギューってして!」
えー···その姿にギューって言われても、困るんだけど。
お風呂上がりの上半身裸状態の百ちゃんから視線を外して、何となく千の顔を見る。
千「そんな格好のモモはダメ。半裸の男にハグだなんて···お父さんは許しません。モモの代わりに僕がもう1回承っとく」
慌てる百ちゃんをわざと煽るように千が私を腕に閉じ込めた。
百「待って!今すぐ服着てくるからっ!絶対待っててよ?!」
バタバタとタオルを放り出しながら千のクローゼットを開ける百ちゃんを見て、私達は肩を揺らして笑いを堪えていた。