第6章 BLESSED RAIN
千が脱衣所からドライヤーを持って来て、ソファーで髪を乾かすのを眺めながらコーヒーサーバーをセットする。
少しずつ香りがたつのを感じながら、ただぼんやりと···千に言われた歌詞の事を考えていた。
そもそも、千がどんな曲を考えているのか分からないのに詞を書けって言うのがハードル高いんじゃない?!
···とか言ったら、千は鼻で笑うかな?
バラードって言われても、恋愛経験ないからどう書いたらいいか分かんないし。
ロック調なんて、それこそ分かんないや。
Re:valeみたいな···とか千に聞いたら大笑いされそうだし。
Re:valeの曲、好きなんだけどな···私。
昔のRe:valeも、いまのRe:valeも。
やっぱり何かヒントがあれば···と思っても、万理も最近忙しそうにしてたから聞けなかったしなぁ。
コーヒーが落ち終わったサーバーに気が付いて、カップを出そうと振り返れば···
『びっ···くりした···千、気配を消して背後に立つのやめてよ』
千「愛聖···なにか悩み事でもあるの?さっきから何度も呼んでも、うわの空だし」
『あぁ、まぁ···ちょっと、詞を書くのって難しいな···とか』
千「愛聖の言葉で、愛聖の思うままに文字にすればいい。僕の事が好き過ぎて困ってる、とかね」
···またそれですか。
はいはい···とひとつ息を吐いて、カップを3つ棚から取り出し並べる。
『書いてみたい事がない訳じゃないの。だけど、日本語って難しいなって思って。千が私をいつも好きだと言ってくれるように、私も千の事は好き。もちろん、百ちゃんも』
千「僕は愛聖にいつだって愛してるを送ってるのに?」
『···とりあえず、私の話を聞いて?確かに好きってひと言で纏めるのは簡単かも知れない。けど、好きっていろいろあるでしょ?LIKEとか、LOVEとかさ?それに拘ってる訳でもないけど、言葉を選ぶのは大事な事かなぁ···とか』
そう考えてみれば、千や万理は···やっぱり凄いんだなって思う。
昔も今も、言葉を紡いでメロディに乗せて。
みんなの心に響かせているから。
万理は···今はそういった活動はしていないかもだけど。
でも昔は、万理が五線譜に言葉やコード譜を書き込んでるのを見てたから。
コード譜···
そうか!