第6章 BLESSED RAIN
ん~···ダメだ、上手く書けないなぁ。
コロリン、とペンを転がし机に覆い被さる。
千との約束の為に、たまたま用事があってラビチャでやり取りした時に出た会話の流れから、千自身に出された条件が私を悩ませる。
千 ー 前にした約束、覚えてるでしょ?僕が作った曲を愛聖が歌うってやつ。僕が曲を作るから、歌詞は愛聖が書いてみて。もちろん急がなくていい、じっくり愛聖の書いた詞に僕が曲を考えるから ー
突然こんな事を言い出すもんだから、私は一瞬···絶句した。
千が詞も曲も作ってくれるんだとばかり思い込んでいた私には、まるで青天の霹靂で。
千 ー 詞を書くのが難しかったら、僕に向けた愛の言葉を並べるだけでいいよ ー
とかも言ってたけど。
愛の、言葉·········ごめん、千。
それこそ私にはハードルが高い。
子供の頃から漠然と万理の書く詞や曲を聞いてきたけど、詞を書くのって難しいなぁ。
そうだ!···万理にヒントを貰うって言うのはどうだろう?
歌詞そのものを考えて貰う訳じゃないから、それなら大丈夫じゃない?
我ながら名案?!
っとなると、今日の所は悩むのはここまでにして。
疲労困憊の私の脳に、甘くて美味しい王様プリンから栄養素を与えてあげよう。
チラッと部屋の時計をみて、もしかしたらまだ四葉さん起きてるかも?と考える。
もしリビングにいたら、王様プリンをおすそ分けしてあげて一緒に食べようかな?
四葉さん、すっっっっごい王様プリン好きだし。
それによく、学校から帰るとポケットからキャンディ出して私にひとつくれたりするから。
きっと学校では女の子にモテモテで、そういうのたくさん貰ってるんだろうな。
四葉さんは口下手っぽいけど、根は素直で正直だし。
スポーツ万能で、男女問わずモテそう!
あ、そうなると一織さんもそうかも。
勉強出来るし、一織さんだってスポーツ万能だし。
見た目も四葉さんとは違う方向で女の子が放って置かない感じだし。
実は···カワイイもの、好きだし?
おっと、これは内緒だったんだ。
ひょこっと肩を竦めてリビングの前まで来れば妙に静かで、レッスンでもしてて誰もいないのかな?とそっとドアを開ければ、薄暗くした部屋のテレビの前には、見慣れたいくつもの後ろ姿が見えた。