第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 万理side ❁❁❁
「全く、無事に初仕事を終えて帰って来たと思ったら捻挫を土産にとか」
ふぅ···と息を吐きながら愛聖を見れば、社長が間に入って申し訳なさそうに顎に手を当てる。
小「そう怒らないであげて?今回のは僕に責任があるんだから。ちょっと考え事をしながら歩いてたから、角を曲がる時に歩く速度を落とすの···忘れちゃったんだよね···」
『社長!それは私も同じですから···ちょっと、ぼんやりしてて、それで···』
つまり、ふたりとも注意が散漫していた···と。
小「だけど、ちょっと考えると面白いよね?曲がり角で衝突!なんて、僕が食パン咥えて走る転校生だったら···とかさ?」
えぇー···
『あ、それ知ってます!学校行ったら同じクラスで席も隣になっちゃって、妙に意識しちゃう感じの』
小「そうそれ!気付いたら恋に落ちてる的な!」
嬉々として話す社長に、詰め襟の学生服を着た社長と···セーラー服を着る愛聖を想像してしまう。
アハハ···ないな。
「社長、その発想はちょっと」
小「え?ダメ?···アウト?」
「ギリ···アウトです」
苦笑を浮かべながら答えれば、社長は憧れるシチュエーションだと思うんだけどなぁ?と言いながら笑った。
「まぁ、分からなくもないですけど。俺も学生時代は友達とどうでもいい話をして盛り上がったりしましたから」
小「でしょでしょ?ちなみに万理くんはどんなシチュエーションに萌えた?」
「俺ですか?そうですねぇ、壁ド···ンンッ···いえ、秘密です」
危ない危ない···社長の誘導に引っ掛かるトコだった。
小「教えてくれてもいいのに?ほら、内緒にしてあげるから、さ?」
「言いませんって、絶対。それより社長?今日1日分の書類の確認と、サインが必要な物がたくさんありますからお持ちします。あと、コーヒーもお付けしますね」
間髪入れずに言えば、社長は一瞬だけ眉を寄せたもののすぐにいつもの穏やかな笑顔を見せた。
小「う~んと濃いヤツ、よろしくね?あ、それからその後、出来たら愛聖さんを寮まで送ってあげて?万理くんは直帰して構わないから。今日はずっと、僕の代わりに事務所にいてくれたから」
「えっと···いいんですか?」
小「うん、もちろんだよ」