第6章 BLESSED RAIN
1日の撮影が全て終わり、みんなに挨拶をして行く。
TRIGGERの3人は姉鷺さんにグイグイと背中を押されながら誰より早く控え室へと戻って行った。
私もあれくらい···忙しくなったらいいのに。
なんて、まだまだ先の遠い事かも。
「お疲れちゃん!今日はスムーズに撮れて良かったよ!ありがとな」
『監督、お疲れ様です。私の方こそありがとうございました。監督とご一緒させて頂けたから、慌ただしくも楽しいお仕事でした。また機会があったらお声を掛けて頂けたら嬉しいなぁ···なんて、営業かけてみたりして』
うふふっと笑って見せれば、監督からも是非そうしたいもんだと笑いを返される。
「そんじゃこれから先の話をしながら晩飯でも?って誘いたいトコだが、穏やかな微笑みを崩さずに後ろに立ってる紳士に怒られそうだから、飯は今度にしとくか!」
監督に言われて振り返れば、そこには社長が立っていて。
「鬼の八乙女、仏の小鳥遊···って、実は昔から有名なんだよ」
こっそり耳打ちされて、その正反対な表現に笑ってしまう。
小「八乙女が鬼って···彼は普段あんな風にしていても、実際はいい所もあるんですよ、監督」
「仏の方は地獄耳と来たもんだ」
小「それも聞こえてますからね」
2人のやり取りにひたすら笑いながら、鬼と仏だなんて···と想像して笑い続けた。
「実際、オレんとこにいくつかCM撮影の仕事の話が来てる。オレから佐伯ちゃんを指名するのは簡単だが、どうする?それじゃ···物足りないだろ?」
これまでの私の経歴を知っている監督は、這い上がって来いよと言わんばかりに私を見つめる。
『自分の力で、勝ち取りたいです。監督、オーディションがある物は日程を教えて頂けませんか?!』
「よし分かった、そう来なくちゃな?オレは佐伯ちゃんとの仕事が好きなんだ。必ず···這い上がって来いよ?」
『···もちろんです。ご一緒出来た時には、後悔なんてさせません』
「その目、忘れないからな?小鳥遊さん、詳しい日程を教えるから時間ちょっといいかな?」
小「分かりました、宜しくお願いします。愛聖さん、控え室で帰り支度してて?」
ぽんっと頭に触れられて、そのまま頷いた。
オーディションの日程が分かったら、受けられるだけ受けよう。
自分の···未来の為に。