第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 龍之介side ❁❁❁
「楽、さっきのだけど···」
楽「なんだ」
撮影が終わってから少しだけ不機嫌な楽に声をかければ、社長そっくりな不機嫌な顔を向けられてしまう。
天「そういう時の顔、ホント社長にそっくりだね」
楽「はぁ?···親父にそっくりとだとか、天···お前眼科行った方がいいぞ」
天「毎日飽きるほど鏡見てるのに分からない楽が、そこに行った方がいいんじゃない?」
「あぁもう、ほら、ケンカするなって···オレの為に」
「「 は? 」」
うぅ···いつもながらふたりの呆れた視線が痛い。
「それよりさ、さっきの愛聖だけど···ケガ、してたのか?」
楽との撮影の前に、なんかバタバタしてたし。
楽「あぁ、アレな。アイツ···足を挫いてんのをひた隠してやがった。突っ込んで聞いたら、通路の角で自分とこの社長とぶつかってコケたって言ってたけどな」
捻挫か···オレとの撮影は、確か立ってる時間が長かったよな?
監督はセリフなしで、流れだけ守ってくれたら後は自由に動けって言ってたけど、どうしたものか···
楽「龍、それがどうかしたのか?」
「あ、いや···」
楽はさっき、なんかこう···上手いこと流れを動かしてたけど、オレには何が出来るんだ?
「佐伯さん入りマース!」
『宜しくお願いします!』
スタッフの後ろから、元気よく挨拶をしながら愛聖がスタジオに入ってくる。
『龍も待たせちゃってゴメンね?頭の切り替えに時間かかっちゃって』
オレ達の所に歩いてきながら、愛聖が肩を竦める。
「こっちの都合を押し付けてるんだし、それは構わないよ。でも、足の方は大丈夫?湿布とかしてないみたいだけど」
チラッと足を見て、また愛聖の顔を見る。
『あ~···うん、まぁなんとか。撮影あるのにあからさまに湿布なんて貼れないし。でも社長が監督から預かった塗る湿布薬みたいなやつを丁寧に塗り込んでくれたからヒンヤリはしてるよ?』
「「「 社長が?! 」」」
『え?』
まぁ、あのいつもニコニコ笑顔の社長さんなら、とか思うけど。
『小鳥遊社長は、ほんっとに穏やかで優しくて···でも、時々ちゃんとまっすぐな言葉をくれる。さっきみたいな姿を見ると、社長の為にもっともっと頑張るぞ!って』