第6章 BLESSED RAIN
「で、オレは何をしたらいいんだ?こ、声聞きたいとか言われても、なんか喋るとか、あと···」
ー 実は··· ー
愛聖がそう言い出して、朝からずっと撮影してて···最後にもうひとつ撮影をするまでに気持ちのエネルギーが足りなくなっちゃった···と電話の向こうで力なく笑う。
そして最後の撮影の相手ってのが。
「エロエロビースト、なのか」
ー そうなんです。スタッフさん達も相手が龍だから凄いの期待してるみたいで。監督さんも、私には自然体で龍にぶつかっとけって言ってくれてるんですけど。さっき楽との撮影で、ちょっと···頭の切り替えが鈍くなっちゃって、それで··· ー
「なるほどなぁ···」
ー 天も楽も、それなりにCMが流れる時間帯に合わせての感じで撮ったんです。でも、龍との絡みは大人枠の時間帯なので···ちょっとハードル高いな、とか。私、色気って言われても皆無だし ー
···確かに。
愛聖は色気ってより、なんていうか···一織がしこたま構いたくなる感じのカワイイ系だしな。
ん?待てよ···?
そう言えば前に大和さんと壮五が借りてきた映画のって、Re:valeの千とそういうシーンあったんじゃないか?
いや、あったよな?
ギリギリ路線な感じはしたけど、ちゃんとこなせてただろ?
「あのさ?前に見た映画の時って、ほら、Re:valeとのダブル主演のやつ。あの時ってちゃんと演じられてたんじゃないのか?あの幼妻的な?」
ー あれは千が結構頑張ってリードしてくれたから、それが功を奏したみたいな感じで。その頃の私ってダメダメで現場では泣いたりしなかったけど、千の家では悔しくて泣いてばっかりだったから ー
「でも、愛聖だって頑張ったから仕上がったものなんだろ?だったら、その時を思い出して体当たりするっきゃないだろ?」
なんか、こんなにネガティヴな愛聖って珍しくねぇか?
撮影中に、なんかあったんじゃないのか?
いや、でも···それならそれで、今日は社長が一緒に行ってるし対応は効くだろ。
それなのに、わざわざオレに電話してくるとか。
「もし、言いにくいことだったら言わなくてもいいけど···もしかして愛聖、不安になるような事でもあったのか?」
ポツリと言った言葉に、愛聖が急に黙り込む。