第6章 BLESSED RAIN
こないだのハプニングの、一織の機嫌を取るために···の、格好だけど。
格好自体はまぁ、ナギ寄りだけど?
何気にこうやって見てみると、結構···愛聖ってカワイイんだよな。
それに、万理さんに甘えてる姿を見て、時々ちょっと羨ましいとか思ったりする自分もいて。
やっぱりアレだな···万理さんみたいな大人の男!って感じだったら、頼っちゃったり甘えちゃったりするんだろうなぁ。
万理さん···男のオレが見ても、カッコイイし。
愛聖にそうされてると、万理さんもなんだかんだ言って手助けしたり甘えさせたりしてるし。
もし···もしも愛聖が、オレにちょっと甘えて頼ってきたりしたら。
···ない、な。
どうやったって、万理さんには勝てねぇよ。
はぁ···とひとつため息を吐いて、ポケットにスマホを押し込んだと同時に盛大に着信音が鳴り出した。
「誰だよ···こんな時に、って···え?愛聖から?」
撮影終わったのか?とか、そんなこと考えてる場合じゃねぇな。
指先で着信をスライドさせて、すぐにスマホを耳に寄せる。
「おぅ、どした?」
ー あ、三月さん?いま···大丈夫ですか? ー
なんだ?
なんかちょっと、元気なさげな感じだな。
「ちょうど手が空いたとこだけど、愛聖は仕事終わったのか?って事は夕飯の事か?」
ごく普通の、最近は特に普通の、愛聖がオレに電話を掛けてくる用事だと思って対応してみる。
ー あ···えっと、そうじゃなくて。三月さんの声を、聞きたいな···なんて ー
「なんだそんなこと、か···って、えぇっ?!」
い、いいい今なんて言った?!
ー あとひとつ撮影があるんですけど、ちょっと元気が足りなくなっちゃって。誰かに元気を分けて貰おうかと思った時、三月さんが1番に浮かんだから···ダメ、でしたか? ー
「ダメじゃねぇけど···あ、そうだ!万理さんじゃなくていいのか?」
ー 万理、ですか? ー
って、なに言ってんだよオレ!
動揺し過ぎて変なこと言い出す前にちょっと落ち着けオレ!
通話口を軽く押さえて、ゆっくり深呼吸をする。
ー 万理には···電話してないですけど、万理に電話した方が良かったですか? ー
「いや、その事はもう忘れてくれ」