第6章 BLESSED RAIN
監督が、見学してるクライアントの所へ足早に向かい、幾つか言葉を交わして···笑いながら自分の胸を叩くのが見えた。
そして監督が戻って来て···
「撮影続けるぞ。予定していた物とは大幅に内容を変えるけど、オッケーも出た。いいモノを作る為の変更だと言ったら速攻オッケー出たから心配すんな?今からざっと流れを説明するから、そこんとこよろしく!」
『ありがとうございます···監督』
「おいおい、オレを誰だと思ってる?動きがなくったって、甘いの撮ってやるっての!任しとけ!」
さっき見た様子と同じように、俺達に監督が胸を叩いて見せて、スタッフに説明をして···撮影に入った。
シャワーの後、タオルで濡れ髪を拭きながら部屋のドアを開ける···俺。
目の前のベッドには俺のシャツを羽織って、拗ねた顔をしながら足首に包帯を巻く愛聖がいる。
俺はベッドに上がり、背後から抱き寄せながらこめかみにキスをする。
「いつまでも拗ねてんなよ」
『だって、一緒に出掛けるの楽しみにしてたのに』
小さく呟きながら愛聖が包帯で巻かれた足に触れる。
「これからずっと、俺はお前と一緒にいてやる」
愛聖の髪を結い上げている赤いリボンを解き、自分の左手の薬指に結びける。
同じように愛聖の指にも結び付け···
「予約、したからな」
小さな手を包み込み、その結び目に唇を寄せる。
『キャンセルなんて、出来ないからね?』
「しねぇよ···キャンセルなんか」
更に抱き寄せた俺の耳元で、小さく愛聖が囁いた。
『楽···私を見て』
は?
まだカット掛かってねぇのに、何言ってんだ?
その言葉も含めて言われたように愛聖の顔を見ると、不意に寄せられる唇の感触。
『予約、確定しました』
ふわりと笑う愛聖を、ゆっくりとベッドに倒していく。
肌蹴た胸元からブルー地に細かいラメ入りのレースで飾られた下着が露わになって···そこで···
「カーーーーット!!」
監督の声がスタジオに響き、俺達の撮影が終了を告げる。
「お前···アドリブにも程があるだろ」
愛聖の頭を軽く弾き、早くシャツを着ろと言おうとして顔を見れば。
その瞳には···俺は写っていなかった。