第6章 BLESSED RAIN
❁❁❁ 楽side ❁❁❁
「佐伯 愛聖さん、スタンバイオッケーです!入りマース!」
『すみません、お待たせしました。よろしくお願いします』
さっきと違うヘアスタイルと、天の時とは違う···少し大人っぽいメイクをした愛聖がスタジオに入って来る。
『ごめんね、楽。待ちくたびれたでしょ?』
「男が女を待つのは当たり前だ···とか言ったら、引くか?」
笑って見せて言えば、愛聖は。
『そうかも··· 』
とケラケラ笑った。
『監督がスタンバイしてくれって言ってる。楽達スケジュール···厳しいんでしょ?』
「まぁな。じゃ、行くか」
セットの方へ数歩進んで違和感を感じる。
チラリと見れば、つい今しがたケラケラ笑っていた顔が少し強ばっていて···僅かながら、歩行が不自然な気がする。
「おい、待て。お前···足どうした」
『えっ?別になんでもないけど』
「なんでもないヤツが、片足庇いながら歩いたりしねぇよな?」
スッと目を逸らして前に進もうとする愛聖の肩を掴み、立ち止まらせる。
『っ···』
···足首か。
「見せてみろよ」
『大丈夫!ホントになんでもないから···ほら、早く撮影しないとスケジュール押しちゃうからって、楽?!』
俺に足を見られないように隠そうとする愛聖を無理やり抱え上げ、近くのイスに座らせる。
片膝をついてその足首に触れて見れば、そこは僅かに熱を帯びていた。
「腫れてんじゃねぇか!なんで早く言わないんだよ」
『···こんな事くらいで、撮影止めたくない。だから楽、騒がないで』
コイツ···
「八乙女くん、佐伯ちゃん。どうした?」
『監督···すみません。すぐ入ります』
「入らせねぇよ···監督、ちょっといいですか?実は、」
『楽!』
愛聖が止めるのも聞かずに、監督に事実を話す。
「佐伯ちゃん、気持ちは分かるけど···そう言うのはちゃんと報告しないとダメだろ?ん?」
『すみません···でも私、この仕事はちゃんとやりたいんです。だから監督、撮影続けさせて下さい!お願いします···』
真剣な眼差しで訴える愛聖を見て、監督も小さく唸りつつも···ひとつ頷く。
「分かった。ちょっと待ってろ?」