第6章 BLESSED RAIN
恋人達の甘い朝···をシナリオに沿って演じたけど、始まる前にこっそり天がアドリブ入れるかもって言ってたから、自然な感じで撮り終えた。
楽のは···少しオトナな恋人達の休日、か。
シナリオはちゃんとあるけど、どんな風に演じればいいんだろう。
あんまり考え込み過ぎると良くないけど、イメージが掴めないと困るしなぁ。
オトナ···少しオトナ···う~ん···
次のメイクに切り替える為に一度メイクを落としていると、ドアが控えめにノックされた。
天「ボク、だけど。ちょっといいかな?」
『天?大丈夫だよ、入って?』
返事をするとドアが開けられ、天が部屋に入って静かにドアを閉めた。
『ごめんね、いまメイク落とし始めた所だったから』
天「いいよ、別に。ノーメイクの愛聖は見慣れてるし。はい、これ···龍から差し入れだって」
鏡越しに見れば、天が龍のラビチャに添付されてた写メと同じドリンクを差し出していた。
メイクをすっかり落とし終わり、振り返ってそれを受け取った。
ペットボトルのパッケージには、期間限定!南国の風を感じるフルーツ味···とか書いてあって。
思わず声に出して読みあげれば、それを黙って聞いていた天が笑いだした。
天「南国の風を感じるフルーツ味って、何だか詰め込めるワードを詰め込み過ぎた感じがするけど···これを箱買いしてる龍って、ちょっと···変?」
『箱買いまでしてるんだ、龍』
天「そう。しかも段ボール箱でいくつもね」
届いた段ボール箱を楽しそうに開けていく龍の姿を思い浮かべて笑ってしまった。
『あ、そうだ天?私に用事があったんじゃないの?』
天「いま終わった···って言うのも本当だけど。この後、楽との撮影があるでしょ?だから、ひとりにしたら色々と考え込むんじゃないかって、思ったから」
まぁ、まさにそうでしたけど。
天「その顔を見る限り、正解だったんだね。愛聖、これは仕事。だから同じ立ち位置にいれば平気。楽はそんな、安い男じゃないから」
厳しく聞こえる天の言葉に、仲間を思いやる気持ちが見える。
『うん···分かってる』
天「ボクも龍も、撮影が終わるまで側にいるから」
『ありがとう、天。私は大丈夫だから』
そう返して、龍からの差し入れに口を付けた。