第6章 BLESSED RAIN
「いい顔見せるようになったなぁ、佐伯ちゃん」
『なんですかそれは』
「いや?オレが最後に見掛けた時、今にも消えそうで儚げな顔してたからよ」
それはきっと、仕事も生活環境も···空回りしてた頃、なんだと思う。
『私は消えたりしませんって。これからまだまだやりたい事がたくさんあるんです。千との約束もあるし···あ、これは内緒ですよ?』
「千って、あのRe:valeのか?相変わらず仲良しだな、おふたりさんは。会見のときに熱愛か!とか出た時は、そうだろうよ···とか思ったしな。で、ホントの所はどうなのよ···ホントに熱愛なのか?」
『千と熱愛なんてありえませんって。だって千ですよ?ないない。あ、じゃあ監督と···なんてどうですか?なんて』
ふたりでゲラゲラと笑いながら合間に言えば、オレと佐伯ちゃんじゃ誰も信じねぇだろうよ!とまた笑い合った。
「でもまぁ、今度Re:valeも声掛けて食事でも行こうか?とだけは誘っとくよ···社長陣みたいに高級レストランを予約、なんてのは出来ないかも知れねぇけどな?」
『高級レストランじゃなくて平気ですよ?千は野菜があれば大丈夫だし、百ちゃんはお肉好きだし!』
「そりゃ助かる!で、佐伯ちゃんは何食いたい?」
『私ですか?う~ん···なんでも!育ち盛りなので!』
「こりゃまた交渉上手だな?よし、じゃ本腰入れてRe:valeに声掛けとくから、そん時はよろしくな!」
さっきと同じように豪快に笑い、一服でもしてくるわ!と胸ポケットをひとつ叩いて監督は外へと出て行った。
私もそれに続いて控え室へと戻った。
次は···楽との撮影だし、少し頭の中を切り替えておかないと、
あの日以来、楽とは特に連絡は取り合ってはいない。
向こうからも来ないし。
私からも連絡するような用事もなかったから。
龍はなぜか、局で出されたお弁当が美味しかったよ!とか、新商品のドリンク試してみた?とか、たわいもない事をラビチャして来たりしてたけど。
きっとそれは、龍が気を使ってくれてるんだろうと思った。
それよりも、っと。
楽とのCMのストーリーを頭に入れる為に資料を開く。
下着のCMなのに彼シャツ···とか、ちょっとどうかと思ってはいたけど。
さっきの天との撮影では、変なイメージにはならなかったと思う。