第6章 BLESSED RAIN
「そろそろスタンバイの時間だね。ボク達がトップバッターだから、1回でキメるよ」
出来るだけ、愛聖に負担が掛からないようにしてあげる。
もし···もしミスっても、ボクがアドリブでカバーすればいい。
型にハマった演技だけじゃ、物足りないでしょ?
だから。
とびきり甘い朝を、愛聖にあげる。
そして。
それ以上に甘い朝を、ボクに頂戴?
スタッフの指示に従い、羽織っていたローブを脱ぎ捨てセットの中へと入った。
「よろしくお願いします」
愛聖もローブを脱ぎベッドの中に潜り込み、自然な寝姿でボク達は毛布の中で寄り添って目を閉じた。
「よし、リハなしだけどふたりとも頼むな!」
監督の声が現場に響き、カウントダウンが始まり···カメラが回り出す。
カーテンの隙間から差し込む朝日で先に目が覚めたボクが、まだベッドでスヤスヤと眠る愛聖を見て微笑む。
ベッドから抜け出し、真っ白なシャツを羽織ってから、テーブルポットでカフェオレを入れながら、寝返りを打つ愛聖を見て···口元を緩ませる。
愛聖はカフェオレの香りで微睡みながら目を覚まし、ゆっくりと起き上がってボクを見て微笑む。
『···起こしてくれてもよかったのに』
軽く目を擦る動きで毛布が抜け落ち、淡いピンクの下着が露わになる。
ボクはそれを見て羽織っていたシャツで愛聖を包みながら抱き寄せ、瞼におはようのキスを落とした。
「おはよう···甘いカフェオレ、出来てるよ」
そう言うと愛聖は嬉しそうにカップに視線を移す。
「でもボクは、もっと甘いのが···欲しいんだけどね」
愛聖に顔を寄せて、その柔らかな唇に自分のを近付けていく。
はらりとシャツが落ち、新作の下着姿の愛聖がズームアップされて。
「カーーーーット!凄いねふたりとも!1発オッケー!!」
監督の声にパッと体を離しながらも、無事に1回で撮り終わった嬉しさを顔に出す愛聖がかわいくて、ボクは思わず···そのまま鼻先にキスをした。
「ミスしなかった···ご褒美だよ」