第6章 BLESSED RAIN
あたかも何もなかったかのように、さりげなくみんなが集まっている場所へと向かってみる。
廊下の向こう側から万理がバタバタと掛けてきて、目的のドアをガチャりと開けた。
万「いま連絡が入ったんだけど、チケット···完売したって!」
完売···?!
まだ発売開始してから数分なのに?!
部屋を覗けば、紡ちゃんが真剣な眼差しでパソコンを更新して···みんなが固唾を飲みながら画面を凝視していた。
私も何気なく部屋に入り、同じように覗き込めば。
“ SOULD OUT ”
画面には大きく売り切れを表示する文字が連なっていた。
ポロポロと涙を零す紡ちゃんを、みんなが囲み嬉しさと喜びを噛み締めあっていく。
こんな凄い売れ行きの中で、自分がチケットを手に入れる事が出来るなんて···
奇跡、かも知れない。
みんなはまだデビュー前だと言うのに、これほどの反響があるなんて、私···凄い未来と可能性を持ってる人達と、同じ空気の中で生きてるんだ。
そう思うと、自分ももっともっと頑張らなきゃ!と気合いが入る。
今はCMの仕事がひとつ入ってはいるけど、でも···その後のスケジュールは真っ白なまま。
その仕事だって、自分で掴んだ仕事ではない。
与えられた仕事は、きちんとやり遂げる気持ちはちゃんとある。
だけど、八乙女社長から流された仕事にいつまでもゆっくりと浸かっている訳には行かない。
私はいま、八乙女プロダクションの人間じゃない。
小鳥遊プロダクションの···人間なんだから。
そう思いながら、私は静かにその場を離れた。
向かうべき場所は、決まっている。
心なしか早足になりながらも廊下を進み、ひとつのドアの前で足を止めた。
今日はこれから、私の仕事に同行してくれる予定だから部屋に居ることは分かってる。
もしかしたら、それまでに書類業務をしているかも知れないけど···でも、話をするなら少しでも早い方がいいとドアをノックする。
小「どうぞ?」
中からは社長の声が聞こえ、私はドアを開けて顔を見せた。