第6章 BLESSED RAIN
それから数週間経った、ある日。
朝から事務所の一室でみんながそわそわしていて、それに加えて紡ちゃんまでもが顔を強ばらせていた。
それもその筈で。
今日は、例の野外ライヴのチケット発売日。
そこは私もちゃんとチェックをしていて、みんながひとつの部屋に集まっているのを知りながらも、私は私で別室で電話を片手にその時を待っていた。
社長にお願いすれば、チケットの1枚位は出して貰えるだろうけど、それだと···関係者ってズルいってならないかな?なんて思って。
それに、自分でお金を出してチケットを手に入れる方がアイドリッシュセブンを応援してくれてるファンのみんなと同じ気持ちでみんなを見られるから。
だから一般のお客さんと同じように、チケット争奪戦に交わろうと考えた。
スマホには既に電話番号は準備してある。
あとは時間が来たら、クリックするだけ。
ドキドキしながら時計を眺め、その時を待つ。
あと···10秒···
···5秒···
···3···2···いまだ!!
時間ぴったりに番号をクリックして、慌ててスマホを耳に当てる。
コール音が数回鳴り、その後。
ー お電話ありがとうございます、チケット··· ー
繋がった!!!
『あの、すみません!!アイドリッシュセブンのライヴのチケットを1枚お願いします!!』
ちょっと恥ずかしかったけど食い気味に言えば、対応してくれてる人も慣れているのかすんなりと購入手続きを始めてくれる。
『チケット代の支払いはカード決済で大丈夫です。はい、番号は···』
手元に用意したクレジットカードを見ながらカード会社の名前や番号、カード名義の名前を告げて行く。
ー お届け先の住所をお願い致します ー
『あ、はい。住所は···』
スケジュール帳を開き、ひと文字ずつ指先で辿りながら間違えないように送付先住所を伝え、相互確認まで終わらせた。
ー ではお届け先は···の···、···愛聖様でお間違えないでしょうか? ー
『はい、大丈夫です。よろしくお願いします』
通話を終えて、ひとりガッツポーズを決め込み···チケットを手に入れられた事を噛み締めた。
当日、私が観客席にいることは黙ってよう。
変なプレッシャーになったら嫌だし。
アイドリッシュセブンのファンのみんなと、一緒に楽しもう。