第6章 BLESSED RAIN
一「約束ですからね、佐伯さん?」
分かってます、と返そうと一織さんを見れば···
小さなリップ音と共に、頬に柔らかな感触と···それから、さらりと頬を撫でる一織さんの、髪。
一「約束できたご褒美です」
透き通った瞳で微笑む一織さんを見て、体中の血液が沸騰して行く。
『わ···わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!』
一「なんですか急に耳元でそんな大きな声を出して」
だ、だって今!!
三「愛聖どうした?!」
私の叫び声にドアが思いっきり開かれ三月さんが飛び込んで来る。
『い、い、いいいいいい、いお、いお一織さんが!!』
一「動揺し過ぎですよ、中学生ですかあなたは。それに、耐性がついているんじゃなかったんですか?」
耐性って、それはあくまでも壁ドン攻撃の事で!!
『一織さんに頬にキスとか想定外でしたよ!とてつもなく反則攻撃です!!』
万「え?」
「「 頬にキス?! 」」
驚きの声を上げるみんなに、今度は一織さんが小さな動揺を見せる。
一「私は別に、六弥さんの真似事をしたまでです」
大「ナギ?」
ナ「ワタシの?それなら心配いりません!スキンシップ大事デス!」
いや、そういう問題では···
一「そんな事より、いつまでもわちゃわちゃしてるとレッスンの時間が減っていきますよ···さ、早くこの部屋から出て下さい」
一織さんの言葉にぞろぞろとみんなが廊下へ出る。
一「先にレッスン場へ行ってます。皆さんも速やかに支度をして降りて来て下さい」
ひとりサッと歩き出す一織さんの姿を、呆然としながら見送った。
『二階堂さんと万理の壁ドンは経験したけど、まさか···こんなのはドッキリでした。どうしよう、私もう···』
今もまだ熱を持つその場所をそっと手で押さえる。
大「なに?お嫁に行けないとか言うのか?」
『顔、洗えない』
三「洗えよ!」
三月さんの鋭いツッコミに思わず笑いながら、今日は随分といろんな経験値が上がったなと、コスプレ状態の自分を見て、また笑った。