第6章 BLESSED RAIN
『電車ある時間だったし、最悪乗り遅れたら考えたけど···龍か送ってくれるって言ってくれて。楽は食事をしてたお店で千と百ちゃんとたまたま一緒になって飲まされちゃったから運転出来なかったし』
···千と、百くん?
まぁ、それはいいとして。
問題はその後だ。
アルコールが入って運転出来ないからって、愛聖が家まで運転して送った。
その後にTRIGGERの残りのメンバーが部屋に来た。
空白の時間に、酒が入った若い男と愛聖が···2人···
どれだけ酔っていたのかは分からないけど、それでも人はアルコールが入れば正しい判断が出来なくなる、よな?
そして、さっきのあの愛聖の感じ。
まさか、ね。
考えたくはないけど、空白の時間に何かが起きていたとしても···おかしくはない、とか?
考えれば考えるほど、胸の奥がザワついてしまう。
大和くんの話と照らし合わせれば、なにかあったとしか考えられない。
部屋に閉じこもりがちで、彼らとの接触を拒んでいた。
それも食事も取らないでいる程に···
子供の頃、愛聖が家の鍵を忘れて玄関の前に座っていた事を···ふと思い出す。
あの時だって、俺を避けるかのように顔を背けてなんでもないからと繰り返していた。
寒空の下、マンションの通路で膝を抱えている女の子が、なんでもなく座り続ける訳ないってバレバレなのに。
それでも暫くは理由を言わなかったよな···
で、結局。
少し話をしている内にその理由も分かり、俺の部屋で待つのは抵抗あるだろうからって、俺も一緒に座って愛聖のお母さんが帰るのを待った事があった。
その時の状況とは違うけど、なにかあると愛聖は自分の弱いところや失敗した事を隠すように人を寄せ付けないところがある。
じゃあ···今回も?
なにか言いたげだった愛聖の顔がチラつき、それと同時に胸が重苦しくなる。
今更かも知れないけど、話を聞いた方がいいかも知れないな。
愛聖の事だから、なんでもないって言いそうだけど。
もし、何かあったんだとしたら。
誰かに話す事で、気持ちが楽になる事もあるだろうから。
後で···時間作ってみようか。
ホントに何もないなら、それでいいし。
···出来れば、そっちの可能性が高いことを祈りたいけど。