第6章 BLESSED RAIN
妙な女優魂に背中を押され、当初の目的を押し退けて支度を進める。
戻ってきた万理に、部屋のポスターを見ながら手伝って貰って···私なりの、ではあるけど···
まじかるここなの準備が整った。
万「完成~!じゃあ、さっそく三月くんとナギくんを呼ぶね?」
ステッキを持ち深呼吸をして頷くと、万理がドアの隙間から2人を呼び入れた。
三「おおっ!なかなかいいんじゃね?」
ナ「oh!!!beautiful!!」
私を見たナギさんが大興奮の勢いで抱き着いてくる。
『うきゃっ!···ちょっとナギさん!急に抱き着いたら危な···わっ!』
思いのほかナギさんの勢いが強すぎて、ふたり一緒にベッドに倒れ込む。
ナ「···Sorry」
覆いかぶさっていたナギさんが腕を抜いてベッドに手を着いた姿を見て···体温が急激に下がる感じがして。
あの時のと、被って···
『や、めて···楽···』
ナ「ガク、とは?」
ナギさんの言葉に、思わず口にしてしまった言葉を隠す様に口を押さえて体を起こす。
三「いま、楽って···言わなかったか?それってもしかして、TRIGGERの八乙女楽、か?」
『違います、なんでもありません···えっと···そう!一織さんの所へはこのまま行けばいいんですか?』
話をすり替えるように早口で言って、セリフは?とか、ポーズは?とかをナギさんにそれを聞く。
腑に落ちない顔をした万理がいたけど、でも···あの日は何もなかったし、聞かれて困ることは大してないから。
だけど、どうして今···ナギさんと楽が被ったんだろう···
気が付かないうちに、トラウマになってるって事はないよね?
これからTRIGGERとの仕事があるのに、心配···しちゃうよ。
ここに移籍した最初の仕事だから、失敗はしたくない。
楽とのペアとCMがどんな感じで考えられているのかは当日まで分からないけど、ちゃんとやり遂げたい。
ナギさんからイチオシのセリフとポーズを教わりながら、頭の片隅では···そんな事を考えていた。